野菜選びで知っておきたい!
栽培方法ごとのこだわりと、野菜の値段

【野菜のキホン 栽培編②】

前回の、野菜のキホン 栽培編①】では、基本的な栽培方法の違いについてご紹介しました。栽培方法の違いは、それぞれの生産者さんが何にこだわっているかによって変わってきます。また、私たち食べ手として気になるのが、野菜の値段のこと。今回は、栽培方法ごとの特徴やこだわり、さらに価格への影響についてお伝えします。

栽培方法や設備にこだわると、価格もアップ!?


野菜の栽培方法には、農薬や化学肥料の使用状況によって、大きく3つの種類に分けられます。

・慣行栽培

・環境に配慮した栽培(特別・有機・自然)

・その他の栽培(水耕・工場)

それぞれの栽培方法にはメリットとデメリットがあり、それによって野菜の値段にも影響があります。

 

 

【慣行栽培】

慣行栽培とは、広く一般的に行われている栽培方法です。農薬や化学肥料を導入することで、肥料やりや水やり、除草、害虫駆除などの管理をする手間はかかりますが、慣行栽培は収穫量が多く、また廃棄は少ないため、生産性がアップします。
 

実は、野菜を市場で流通させるためには、大きさや形などの規格があります。規格外になってしまった野菜は廃棄(一部は加工用として出荷されます)されてしまうので、規格品に育てあげることが、生産者にとっては最も苦労するところなのです。

 

私たち食べ手側も、スーパーに並ぶ野菜を選ぶ時には、大きさや形などを目利きして購入しますよね? 見た目がよくなければ、手間暇かけて育てたものでも売れません。また流通しやすく、値段をつけやすくする目的でも、規格が定められているのです。

 

つまり、大きさや形がある程度一定であれば、野菜の値段も変わりにくくなるのです。生産者にも、そして私たち食べ手にとっても、安定しているのが慣行栽培なのです。

 

 

 

【環境に配慮した栽培方法】

環境に優しいイメージのイラスト
 

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食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)には、次のような記載があります。

[第四条] 農業については、食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能の重要性にかんがみ、農業の自然循環機能*が維持増進されることにより、その持続的な発展が図られなければならない。

[第三十二条]国は農業の自然循環機能の維持増進を図るため、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進その他必要な施策を講ずる。
*農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつこれを促進する機能のこと。

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上記の法律などによって、環境に配慮した栽培方法を推進する動きがあることや、私たち食べ手の安心・安全に対する意識の高まりによって、最近では環境保全型農業が増えてきています。

この環境に配慮した栽培方法は、「特別栽培」「有機栽培」「自然栽培」と分けることができます。それぞれの栽培方法のちがいは前回の記事をチェックしてくださいね。



今回は生産者のこだわりや、価格への影響を比較してみます。

 

 

<特別栽培>

農薬と化学肥料の使用をどちらも50%以下に低減した栽培方法。環境に配慮しながらも、生産性をアップさせるのが目的です。慣行栽培に比べて収穫量は落ちるため、その分コストは高くなりますが、「特別栽培農産物」という付加価値がつきます。生産者の情報を掲示することができるなど“顔の見える農産物”であり、生産者とのつながりが感じられます。

 

 

<有機栽培>

農薬と化学肥料を使用せずに栽培する方法。指定機関から認証されることにより、“有機JASマーク”をつけて販売ができます。ただし、農薬や化学肥料を使用しないので生育には時間がかかり、また形が悪いものや傷が増え、収穫量も減ってしまいます。

 

さらに、認証にはコストがかかってしまうので、販売される値段はどうしても高くなります。しかし、有機食品はこれからも成長し続ける注目の市場。私たち食べ手は、“有機ブランド”に安心感を持って購入しているのです。

 

ところで、有機JAS規格の中には、一部の農薬(指定農薬)と、化学肥料ではない有機肥料(鶏糞やカキ殻などの有機物を原料とするもの)は使用することが認められています。「有機栽培=完全無農薬・無肥料」と捉えられがちですが、この点はぜひとも知っておきましょう。

 

 

<自然栽培>

有機栽培が一部の農薬と肥料の使用が認められているのに対して、すべての農薬・肥料に頼らずに栽培する方法が自然栽培です。耕作や除草なども行なわずに、自然の力のみで生育させますが、特別栽培や有機栽培のように数値的な決まりはありません。

 

農薬や肥料を使用すると、野菜の生育を促すことができます。ほかにも、病気になりにくく、虫がつきにくくなるなどの効果もあります。自然栽培ではこれらを使用しないので、収穫までに時間がかかり、収穫量も多くはありません。また、形が不ぞろいなものや多少の虫食いはよしとしても、生産効率はあまりよくないため、コストは高くなってしまいます。

 

一般的に流通させるというよりは、こだわり野菜として自然食品のお店で売られたり、ネット通販で販売されたりすることが多いです。野菜本来のしっかりとした風味が感じられ、通販ユーザーの増加とともに、人気も高まってきているようです。

 

 

 

 

【そのほかの栽培方法】

<水耕栽培>

水耕栽培の写真


水耕栽培は、土を使わずに培養液で栽培する方法です。養分を均等に行き渡らせることができるので、生産が安定することがメリットです。また、高設栽培にすることができるので、立ったままの姿勢で作業ができることも大きな特徴。土壌栽培では地面に育つため、かがんだ姿勢での作業が続き、生産者には大きな負担になってしまいました。この高設栽培を取り入れることで、作業負担がかなり軽減されます。
 

ほかにも、土を使わないので土壌菌の付着リスクが少ないこともメリットのひとつ。ベビーリーフやサラダほうれん草など、生食する野菜は水耕栽培を導入している生産者も多く、安心感を伝えることができますよね。ただし、初期導入費や維持費がかかることから、野菜の値段は高くなる傾向にあります。

 

水耕栽培が適している野菜もあり、かいわれ大根などのスプラウト系の野菜が代表的です。パックで販売されていて、根本の部分に白いスポンジがついていますよね。これはスポンジに種を植え付けて、水耕栽培で育てられたからなのです。

 

 

<工場栽培>

工場栽培の写真


野菜の生育に適した条件で、人工的にコントロールした施設内で栽培する方法。おもにフリルレタスなどの葉物野菜で行われています。プログラム制御により栽培され、天候の影響を受けず、土壌菌や虫の付着もないことから、安定品質を目指す次世代型農業です。まだまだ一般的ではありませんが、菌数管理の厳しいコンビニ業界や給食施設などからは注目されています。

 

※菌数管理……店頭で販売する温度や時間に応じて、使用する食材の細菌検査を行ったり、製造工場で菌の数を制御すること。

 

洗わずに食べられる、フリルレタスを購入したことはありますか? これは工場栽培により、土壌菌や虫がつかないだけでなく、人の手を介さない自動化システムにより、細菌数が制御されているからなのです。ただし、設備投資にかなりのコストがかかるため、販売される野菜はどうしても高くなってしまいます。

 

工場栽培は、高齢化により後継者不足が課題となっている、農業の新たなスタイルとしても期待されています。農家や農業法人が転換するというよりは、企業の新規事業としての取り組みとして普及しつつあります。

 

 

 

こだわりを知ると、野菜選びはもっと楽しい!

野菜の写真


いろいろな栽培方法がある中で、どのようなこだわりをもって栽培されたのかを知っておくと、販売価格に違いがあることも理解できるのではないでしょうか。

 

私たち食べ手は、スーパーに限らず、直売所やネット通販などさまざまな方法で野菜を購入できるようになっています。こだわりの栽培方法の違いとそれぞれの特徴が分かると、野菜選びも楽しい時間に。野菜を通して、そこにこめられた思いやこだわりが伝わってくると、生産者とのつながりが感じられるような気がします。

WRITER

小島香住
Kasumi Kojima

野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、
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