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vol.5 ビーツ<Beets>
vol.5 ビーツ<Beets>
旬の時期を迎えると、レストランやカフェでも味わえるようになったビーツ。ここ数年で、ビーツの認知度はかなり高まってきました。ビーツといえば、ロシアの郷土料理であるボルシチが定番。鮮やかな赤色が目を引く世界三大スープのひとつですが、見た目の華やかさとはちがい、とてもやさしい味わいです。
食べたことはあっても、自分で調理したことはないという方も多いのではないでしょうか。今回は、ビーツのおいしさを活かすために知っておきたい、3つのポイントをご紹介します。
“食べる輸血”と言われるのは、見た目からだけじゃない!?
ビーツはオランダやオーストラリア、アメリカなど、海外では広く一般的に食べられていますが、日本でもおしゃれな野菜として徐々に人気が高まってきています。これまでは缶詰や水煮などの輸入品が主流でしたが、国内でも栽培が広がりつつあり、生のビーツが手に入るようになってきました。
その丸い形からカブの仲間と思われがちですが、ビーツは砂糖の原料となる甜菜と同じ仲間。やさしい甘みを感じるのはそのためです。じつは、ほうれん草も同じ種なんですよ。
そして、もっとも目を引くビーツの濃い赤紫色は「ベタシアニン」という色素成分で、ポリフェノールの1種。ポリフェノールの中でも、抗酸化作用の高さで注目されている成分です。(ただし、黄色種のものには含まれません。)またアミノ酸の1種である「ベタイン」が含まれていることも特徴的で、肝機能の向上や動脈硬化の予防以外にも、肌や髪の潤いを保つ効果も期待できます。
ほかにも、カリウムや鉄などのミネラルも豊富で、さらに食物繊維や葉酸なども多く含まれています。いずれも女性が不足しがちな栄養素で、むくみや貧血、お通じなど多くの女性を悩ませる症状の改善に効果が期待できるものです。なかでも、妊娠中の方は葉酸を積極的に摂ることがすすめられています。葉酸の豊富な野菜の代表格であるほうれん草と同じ仲間であるビーツにも、ほうれん草と同等(110㎍/100g当たり※1)の葉酸が含まれています。青菜が苦手な方や、料理の幅を広げたい方は、ビーツも上手に取り入れてみるといいでしょう。
“食べる輸血”と言われるのは、赤い色とはあまり関係なく、その栄養価の高さが理由だということが分かります。
※1出展:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
旬をおいしく味わうための、知っておきたい3つのポイント
<ポイントその1>
皮をむかずに下処理すると、色やおいしさを逃しにくい
ビーツには特有の土臭さがありますが、加熱すると感じにくくなるので、下ゆでしてから料理に使うといいでしょう。また下ゆでをする際には、皮をむかずに丸ごと加熱するのがポイント。皮をむいてしまうと、ゆで汁に色素が溶け出て、色が抜けてしまいます。
まずは茎を切り落とし、土をしっかり水で洗い流したら、皮付きのまま鍋に入れます。かぶるくらいの水と少量の酢(もしくはレモン果汁)を加えて、やわらかくなるまで加熱します。酢やレモン果汁の「酸」の効果で、赤色がさらに鮮やかに発色しますよ。土臭さがこもらないようにするために、ふたをしないこともポイントです。
ゆでる以外にも、オーブンで加熱して下処理する方法もあります。水洗いしたら皮付きのままアルミホイルでつつみ、200℃で30分ほど加熱します。カットしたものを下処理するときには、オーブン加熱の方がおすすめ。加熱したら皮をむいて、料理に使っていきます。
ビーツのポテトサラダ サワークリーム添え
【材料】
ビーツ…1個、ジャガイモ…3個、マヨネーズ…大さじ1、プレーンヨーグルト…大さじ1、赤ワインビネガー…大さじ1/2、塩こしょう…少量、サワークリーム…大さじ1
【作り方】
①ビーツは上記の下処理のポイントを参照にし、さいの目にカットする。
②ジャガイモは水洗いしたらラップでくるみ、お皿にのせて、レンジ(600W)で4分加熱する。
③手で触れるくらいまで粗熱が取れたら、あたたかいうちに皮をむいてフォークで粗くつぶす。
④ビーツを加えて、赤ワインビネガーと塩こしょうで下味をつける。
⑤マヨネーズとヨーグルトを加えて混ぜ合わせ、お皿にのせたらサワークリームを添えて完成。
【ポイント】
ジャガイモがあたたかいうちにつぶして下味をつけることで、しっとりと仕上がります。赤ワインビネガーは他のビネガーへ置き換えてもOK。キュウリやたまねぎを加えて、食感をプラスしてもおいしいです。サワークリームを混ぜながら、色と風味の変化をお楽しみください。
<ポイントその2>
まとめて下処理したあとは冷凍保存がおすすめ
下処理したビーツは冷凍保存が可能です。まとめて下処理しておけば、毎回処理する手間も必要なく、いつでもビーツ料理を楽しむことができます。
下処理したビーツは皮をむいて食べやすい大きさに切ったら、保存袋に入れて冷凍庫へ。食べる時は冷蔵庫で解凍してから使いましょう。スープやスムージーなどペースト状にしてしまう時に、冷凍のまま使うことができます。大きすぎると冷凍にも解凍にも時間がかかってしまうので、少し小さめにカットしておくといいでしょう。
<ポイントその3>
旬のものなら、生で食感を楽しむのもよし
加熱することが一般的なビーツですが、じつは生でも食べることができます。皮をむいてうすくスライスしたものをマリネにしたり、葉野菜のサラダに加えてもいいでしょう。加熱した時のホクホク感とはまたちがい、シャキシャキとした食感を楽しむことができます。特有の土臭さの中にも、ほんのりと甘みも感じられるでしょう。旬のビーツを手に入れたら、生でも食べてみてくださいね。
<新鮮なビーツの見分け方>
皮に傷がついてしまっていると、下処理の時に色が抜け出てしまうので、見た目のきれいなものを選ぶのがポイント。表面がボコボコせず、ふっくらと丸みを帯びているもの、茎のつけ根の皮がむけていないものを選びましょう。直径が7~8cmくらいの大きさのものがおすすめです。
やさしさの中に秘められたパワーをいただこう
皮をむくと姿を見せる鮮やかな濃赤色。まずは、その色の濃さにおどろくはず。そしてひと口かじれば、土臭さから大地のパワーと、その奥にあるやさしい甘みが感じるのがビーツ。食べる輸血と言われるほどの、秘めたる栄養パワーが詰まっています。
ビーツをメインに赤色を活かす以外にも、白いソースや食材を組み合わせてピンク色に変化していくかわいらしさも楽しめますよ。ビーツビギナーの方は、料理のアクセントカラーに取り入れるところからはじめてみるのもいいかもしれませんね。
イラスト/中川美香
WRITER
野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」