あの人と“食べる”を話そう
まんぷくべジinterviewVOL.8

スイーツにしても大活躍!
カボチャの魅力を掘り尽くす

パンプキンパイやカボチャのモンブランなど、ショーケースにはカボチャを使ったさまざまなスイーツが並ぶカフェ、その名も「カボチャ」。フレンチフライやコロッケ、夏限定で登場するかき氷、ドリンクに至ってもカボチャ尽くしで、カボチャ好きならずとも気になるメニューが目白押し。この店を運営するオーナーは一体どんな人なのでしょうか?オーナーの宮本雅代さんにお話を伺いました。

「カボチャ」オーナー夫妻の宮本雅代さんと香二さん
オーナー夫妻の宮本雅代さんと香二さん。2007年、東京・三軒茶屋でスイーツショップ&カフェ「カボチャ」をオープン。2021年にもう少し広いスペースとなる現在の場所に移転。

 

好きが高じて、カボチャ尽くしの専門店に

―――「カボチャ」という店名からも明白ですが、なぜ、カボチャに特化したお店を立ちあげたのですか?

宮本雅代さん(以下、宮本さん):私自身、カボチャが大好きなんです。私も夫も飲食の仕事をしていたので、いつか自分たちの店を出すのが夢でした。出店場所が決まり、私がカボチャ専門のスイーツ店にしたいと打ち明けたら、当初夫も理解できなかったようで、「?」という感じだったと思います。

さすがにカボチャだけだと、お客さまにどう受け取られるか、不安もありました。そこで、カボチャのチーズケーキをメインに据えつつ、ショートケーキやバナナのタルトなど万人受けするケーキをさまざまラインナップしてのスタートとなりました。始めてみると、看板を背負っているだけにカボチャのチーズケーキが一番人気でしたね。

 

「カボチャ」外観

 

―――当初はショートケーキなどもあったのですね。いつ頃からカボチャ一色に変えたのですか?

宮本さん:8年目頃からカボチャ専門に切り替えました。それまでの7~8年、このままでいいのかと悶々としていたんです。というのも私自身、フルーツや生クリームが苦手で、自分が苦手なものを売るということに正直、ずっと違和感をもっていました。独立したからには自信をもって好きなものを売りたいですよね。特に秋からカボチャのスイーツが人気で、店も忙しくなってきたので、カボチャ一本に絞ってもいけるかなといった確信も強くなり、思い切ってほかのケーキをやめることにしました。

 

カボチャの有能性に注目!汎用性が高く、健康や美容にも◎

―――宮本さんのカボチャ一筋な思いが伝わってきます。いつ頃からカボチャが好きになったのですか?

宮本さん:子どもの頃からずっと好きですね。前世で何かあったのかなと思うくらい(笑)。特に祖母が作ってくれるカボチャの煮物が大好きでした。カボチャは野菜なのに甘いので、おかずとしてだけでなく、おやつのような感覚でひたすら食べていた記憶があります。

一人暮らしをするようになると自分の好きなように食事が作れるので、ついに主食がカボチャになりました。カボチャはお腹いっぱいになるので食費の節約にもなりましたし、煮物や天ぷら、サラダ、ポタージュなどレシピを調べるうちにカボチャ料理のレパートリーやアレンジも増えました。

 

―――カボチャの魅力について教えていただけますか?

宮本さん:カボチャは野菜ですが、スイーツといっていいほど甘味もあります。その特徴をいかし、さまざまなスイーツにできるのも魅力の一つ。

また、「冬至に食べると風邪をひかない」という言葉があるくらい風邪予防に役立つビタミンACEが効果的に摂れますし、お肌にもいい。食物繊維も豊富で、腸内環境も整えてくれます。野菜のなかでも栄養価はトップクラス。健康と美容にも嬉しいところが魅力ですね。

 

カボチャスイーツ

 

―――お店には常時10種類ほどのカボチャのスイーツが並び、カボチャだけでもいろいろな形で楽しめるんだと気づかされます。これまでにどのくらいカボチャスイーツを開発してきたのですか?

宮本さん:50種類以上はあると思います。ただ売れないと意味がないので、幻となったスイーツもたくさんあります。ちなみに今まで売り出してきた歴代カボチャスイーツをイラストにしたオリジナルトートバッグを店頭で販売もしていますよ。

 

歴代カボチャスイーツ

 

―――いろいろなカボチャスイーツがあって、全部試したくなります。お店での一番人気を教えてください。

宮本さん:一番人気は「カボチャの焼きプリン」ですね。通年提供している定番メニューで、これが食べたくて来店するお客さまも多いです。カボチャのなかでも私は “皮” 推し。これは皮も一緒に全部食べてほしくて作っているスイーツです。皮は果肉以上に栄養が豊富ですし、さくっとした歯ごたえも楽しんでほしいですね。

 

カボチャの焼きプリン

 

宮本さん:通年提供なので、焼きプリンにはその時期一番甘味の強いカボチャの品種を使っています。今は栗のような甘さの「栗マロン」を使用していますが、もう少ししたら果肉が濃いオレンジ色の「くりりん」に変える予定。

かぼちゃも産地や品種によって旬がありますので、それに合わせてスイーツも変わっていきます。手のひらサイズの「坊ちゃんかぼちゃ」を丸ごと使用したチーズケーキはちょうど今、9~10月が旬。こちらも今だけの人気のスイーツです。

 

坊ちゃんかぼちゃ チーズケーキ

 

―――先日友人と来店し、「カボチャのガトーショコラ」をいただいたのですが、味が濃厚で、食感もねっとり。カボチャの甘みが際立つほどよい甘さで、まるでカボチャを食べているような感覚でした。ケーキづくりにおいて、材料の中でカボチャが占める割合はどのくらいですか?

宮本さん:半分以上はカボチャですね。品種や個体差もありますので、その都度砂糖の量を調整しますが、極力、カボチャの力でケーキになってほしいと思っているので、砂糖や小麦粉などは最小限にしています。

 

カボチャのかき氷が大ヒット!カボチャのブーム到来を待ち望む

―――夏にはカボチャのかき氷がとても人気ですね。テーブル席のあちこちでかき氷を楽しむ人の姿がみられました。

宮本さん:カボチャの魅力をみんなに知ってほしいし、一年中食べてもらいたいという気持ちで続けているのですが、春夏はどうしても売れ行きが下がるんです。そこで、カボチャのソースを使ってかき氷にチャレンジしたところ、ありがたいことに好評で、夏場は予約でいっぱいになるほど来客が増えました(カボチャのかき氷は7~8月限定、完全予約制)。

 

夏限定のカボチャのかき氷

 

宮本さん:春はまだまだ難しいですね。春は国産カボチャの時期ではないため、海外産のカボチャを使用しています。ニュージーランド産の「マロンドール」という品種も栗のようなほくほくした食感と品のある甘さでおいしいんですよ。一年通しておいしく食べていただけるようなカボチャスイーツをこれからも提供していきたいですね。

 

―――宮本さんにとって、今後の課題や願望はありますか?

宮本さん:最近、さつまいもブームが起きていますが、カボチャはいつブームが到来するのかと、ずっと待ち望んでいます(笑)。カボチャは栄養価も高く、ヘルシーで、健康にも美容にもいい。一年中食べられるというイメージをみなさんに持っていただけるように、がんばりたいです。

 

―――カボチャが苦手な人に向けて、おすすめはありますか?

宮本さん:甘いものが苦手な男性の方にも好評なのが、カボチャのピザ。カボチャの甘さに塩味のあるチーズを合わせると食べられる方が多いですよ。カボチャのフレンチフライやコロッケ、チュロスなどの軽食はお店でも食べられますが、ピザはウーバーイーツで提供しています。今後は、スイーツだけでなくフードの方にも力を入れて展開していきたいと思っています。

 


 

「カボチャ」オーナーの宮本雅代さん

宮本雅代(みやもと・まさよ)さんプロフィール

1974年東京都生まれ。パティシエの専門学校卒業後、パティスリーに就職。その後、ブーランジェリー、カフェなど飲食業界に従事。料理人の香二さんと結婚し、2007年に独立、「カボチャ」をオープン。カボチャ以外で好きな野菜はジャガイモ。芋・栗・カボチャが好き。

▶ カボチャ専門店「カボチャ」の詳細はこちら

WRITER

味原みずほ
Mizuho Ajihara

敬食ライター。フードアナリスト。都内飲食店を中心にマルシェ、農家、ブルワー、コーヒークリエイター、料理研究家など幅広く取材。好きな場所は道の駅とアンテナショップ。出身地の青森県七戸町(旧天間林村)は“にんにく”の名産地で、シーズンになると放課後は裏の畑で収穫や出荷のためのネット詰めを手伝っていたことも。おやつは自家製黒にんにく。