定番野菜が極上な一菜一皿に
ねぎ
ねぎ
生で食べると刺激のある香りと辛みがあり、加熱するととろっとして甘みが楽しめる、ねぎ。おもに白い葉鞘(ようしょう)部分を食べるものは「長ねぎ(根深ねぎ)」、緑の葉の部分が多いものは「青ねぎ(葉ねぎ)」と呼ばれます。かつては、「東の長ねぎ」「西の青ねぎ」と言われ、東日本では根深ねぎ、西日本では葉ねぎが食べられていましたが、近年では地域差は少なくなり用途によって選べるようになりました。今回は、そのうちの長ねぎ(根深ねぎ)と向き合っていきます。
ねぎ
香り成分の硫化アリルは、交感神経を刺激して体温を上げる作用があり、血行促進にも効果が期待できます。また、がんの抑制効果として研究されているミネラルである「セレン」を含むのが特徴。青い部分はβ-カロテンを豊富に含む緑黄色野菜です。
<おもな栄養素>
硫化アリル、セレン、β-カロテン(葉)
西洋よりも歴史の古い、日本のねぎ
原産地は中国の西部と言われており、中国では紀元前から栽培されていた非常に歴史の古い野菜です。日本には朝鮮半島から奈良時代に伝わっており、日本書紀にも食用とされていた記録があります。その後江戸時代には、全国的に栽培されるようになりました。
「千住群」と「加賀群」の2つに大きく分けられ、千住群は葉鞘部が長く伸びるのが特徴で育てやすく、一般的にスーパーで売られている長ねぎがこれに当たります。一方、加賀群は寒く雪が多い地域での栽培に適していて、冬の間は土の中で茎や根に養分を蓄え、春になると葉を成長させます。加賀ねぎや下仁田ねぎが代表的な品種です。
また、16世紀に中国からヨーロッパに伝わったねぎは、リーキという西洋ねぎとして定着し、肉厚で煮崩れしにくく甘みや香りが強い煮込み用ねぎとして食べられています。日本においても、長ねぎの産地でリーキが栽培されているところもありますよ。
原産地はコーカサス、地中海東部、中央アジアにまたがる地域と言われていますが、諸説ありあまり明確にはなっていません。ですが、栽培の歴史は古く、古代エジプトのピラミッド建設の時には、既に食用とされていたという記録もあるほど。日本には奈良時代以前に中国から伝わっていて、古事記にもその記載が確認できます。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
葉ねぎは「九条群」に分類されるわよ!
とろとろジューシーがたまらない、まっくろ焼き
スペインのカタルーニャ地方で伝統的に食べられている「カルソッツ」をご存知でしょうか?カルソッツは長ねぎに似たスペインのねぎ(分類上はたまねぎ)で、クリスマスが終わると並び始めます。調理法はいたってシンプル。丸ごと炭火焼きにして、まっくろになるまで焼いたら、外側の焦げたところをむいて、中のまっしろでジューシーなところに豪快にかぶりつきます。
今回は、この食べかたを日本の家庭でも楽しめるように、魚焼きグリルで再現したレシピをご紹介。ねぎを魚焼きグリルに入る大きさに切ったら、表面が真っ黒になるまで焼いていきます。
甘みがギュッと凝縮されてジューシーに仕上がった中のねぎは、何もつけなくても十分においしいのですが、お好みでポン酢や、「オリーブオイル+しょうゆ」「塩+レモン」などをつけていただくと風味がプラスされます。
本場スペインでは、ロメスコソースという、トマトをベースにニンニクやナッツを加えたソースにつけて食べるのが定番ですよ。
まっくろ焼きのレシピ
材料
・ねぎ…1 本
・お好みで調味料
作りかた
① ねぎは青い部分を切り落とし、白い部分を2~3等分にする。
② 魚焼きグリルにアルミホイルを敷き、切ったねぎを並べたら火をつける。
③ 焦げ目がつくまでしっかり焼き、裏返して両面とも焼く。
④ 両面まっくろに焼けたらお皿に出し、外側をむいて中のトロトロを楽しむ。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
青い部分は焦げやすいから別で焼くか、他の料理に使うのがおすすめよ!
泥付きねぎなら、さらに長く保存できる!
長さのあるねぎは、野菜室に入れにくいため保存に困る人も多いのではないでしょうか。実は上手に保存すれば、ねぎは長期保存が可能な野菜なのですよ。買ってきた時の状態別で、保存方法をご紹介します。
【通常のねぎの場合】
根を切り落とし、青い部分と白い部分に切り分けたら、白い部分を2等分にする。濡らしたキッチンペーパーでそれぞれを包み、保存袋に入れます。空気を抜いてしっかり閉じたら、立てた状態で冷蔵庫へ。切り口から少し伸びてきますが、1ヶ月は保存が可能です。
【泥付きねぎの場合】
泥は落とさずに、庭やプランターの土に白い部分が隠れるように埋めます。立てて埋めるのがむずかしい時は、真横よりも少し斜めに上を向くようにするとねぎが曲がりにくいです。また、2リットルのペットボトルの上部を切って中に土を入れ、埋めておく方法も手軽です。土が乾かないように時々水を与えておけば、春先まで保存が可能です。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
キッチンぺーパーは1週間おきに交換するのを忘れてはだめよ!
まとめ
薬味や鍋の具材として欠かせないねぎは、和食のイメージが強いですが、その歴史の古さを知ると、日本の食事に根付いているのが納得です。日本より後に栽培が始まったヨーロッパの食べ方は、和食の奥ゆかしさとはまた違いとても豪快。ご紹介したレシピは、家庭で食べる場合のため長さを切っていますが、網焼きや炭火焼きができるなら、ぜひ丸焼きでかぶりついてみてくださいね。まっくろ焼きのおいしさに病みつきになること間違いなし。バーベキューでねぎを丸焼きする光景が、定着する日がくるかもしれません。
WRITER
野菜や果物のおいしさやすばらしさ伝えるべく、時には優しく、時には厳しくアドバイス。いつもしっかり者でありながら、野菜のこととなると、ついついムキになってしまうかわいらしい一面も。中の人は、野菜ソムリエプロ&管理栄養士の小島香住さん。