【野菜を愛する、小さなカフェ便り#4】
ヴィーガンシェフ・料理研究家として毎日キッチンに立つ篠宮美穂さん。2011年からハワイのヴィーガンカフェで働きはじめ、そこでさまざまな人と出会い、そして大自然の中での暮らしを体験していきます。今回のお話は、なんとハワイ島のジャングルの中! 美穂さんが体験した、スペシャルな夜をご紹介します。
※ ハワイ島のジャングルで過ごした、“一期一会な夜”<前半>の記事はこちらより。
満点の星空の下で、
ハワイ流のおせち料理を囲んだ夜
朝、小鳥の囀りで森の中にいることに気がつく。そうだ、私は今、ジャングルの中にいるのだった。トイレは「小はジャングルのどこでしてもいいよ、大はコンポストにするからトイレでね」と言われていたのだ。朝から自然に包まれている感じで気分爽快である。コンポストのトイレは便座の下がバケツになっていて、排泄物の上におがくずをかけると不思議と臭わない。バケツにある程度溜まったところで、庭の片隅にあるコンポストのスペースに捨て、その上に落ち葉などを被せて微生物が分解してくれるのを待ち、そしてそれが畑の肥料になるのだ。
野外キッチンでお湯を沸かし、コーヒーとオートミールで朝食を済ませた。その後ハワイ島に帰省していた友人たちと合流するためにアハラヌイパークへ。ここは海に直結したウォームポンド(天然の温水プール)で、この時の水温はかなりぬるめ。私は身体が冷えないよう、必死に泳ぎ続けていた。水中には古い角質を取ってくれるというドクターフィッシュがいて、なぜか友人を好んで魚が寄って来て、みんなで大笑い。残念なことに、この公園は2018年のキラウエア火山大噴火による溶岩流出で消失してしまったのだそう。
海から戻ってひと休みして、いよいよハワイ島最後の夜。大晦日の今夜は、アリさんとゼンさんのお友達も招いて、新年パーティーならぬ年越しパーティーをしようということで支度をはじめた。まずは、アリさんがお友達に教わった特別なグリーンサラダを作ろう!ということに。チンゲンサイやレタスなどの葉野菜をザクザクと切ってボウルの中で混ぜ合わせ、ドレッシングはかぼちゃの種、パクチー、ライムなどをフードプロセッサーで。それを葉野菜と和えると、豪快で簡単な、それでいてとってもおいしいサラダのできあがりである。
満点の星が夜空に輝き出したら、パーティーのはじまり! ゲストは「ヤナの森の生活」の訳者であるケイコ・フォレストさんと、その元パートナーであったリッチさん。それから、世界一周旅行をしていてケイコさん宅に宿泊中だったツヨシさんとユカさんカップルの4人だった。特別な年越し蕎麦とお正月のおせち料理の数々(私が元旦に帰るので、アリさんが大晦日に食べさせてくれたのだ)をみんなで囲む。とにかく全員よく食べ、会話も弾み、よく笑い、本当に楽しい年の暮れだった。
この時リッチさんが「一期一会」と言ったのが、なぜか心に残った。一生に一度だけの機会。だからあの夜は、心の芯から楽しくて、みんなでシェアしたごちそうは、10年近くたった今でも覚えている。
そして、ぜひもう一度あの場所に戻りたいと思うのである。
美穂さんがステイしたRoot Down Farmは、宿泊も可能です。
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<プロフィール>
篠宮 美穂(しのみや みほ)
ヴィーガンシェフ、ヴィーガン料理研究家、「MNEMONIC BEVERAGES」ディレクター。カフェを12年経営。渡米してヴィーガンカフェで働きながら、ヴィーガン料理、概念について学ぶ。現在は日本で、地球にやさしくユニークなプロジェクトを立ち上げ中。趣味は自家製酵母のパン作りと、ヴィーガニックコンポストの土づくり。
美穂さん(@rabbitbook)のInstagramページはこちら。