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vol.3 リーキ<Leek>
vol.3 リーキ<Leek>
リーキというネギをご存知でしょうか。「リーキ」「ポワロー」「ポロネギ」などいくつか呼び名があるので、どれかひとつは耳にしたことがある方もいるのでは?
ヨーロッパでよく食べられている西洋ネギで、英語ではリーキ[leek]、フランス語ではポワロー[poireau]、ポロネギはイタリア語のポッロ[porro]と、日本での呼び名はさまざまです。日本で一般的に目にする根深ネギよりも茎が太く、群馬県特産の下仁田ネギのようにも見えますが、葉はひらたく横に大きく広がり、やや淡い緑色をしているのが特徴です。
今回は、リーキのおいしさを活かすために知っておきたい、3つのポイントをご紹介します。
女性の悩みに寄り添う栄養素、鉄分やビタミンB6、葉酸が豊富!
地中海沿岸が原産のリーキは、古代エジプト時代から栽培されていた、とても歴史のある野菜。辛みがまろやかなため、日本のネギのように薬味使いをすることはなく、基本的には加熱して食します。加熱すると上品な香りと甘みが引き出され、崩れにくいのも特徴です。
日本には明治時代に伝わったとされ、葉の形から“にらネギ”と呼ばれていました。現在では、北海道や東北を中心とする根深ネギの産地でリーキが栽培されていますが、レストランへの出荷やネット販売がメインで、スーパーに並ぶことはほとんどありません。実はリーキ、フレンチやイタリアンではなくてはならない野菜のひとつ。多くのレストランでは輸入リーキを取り扱っていて、国産リーキはとても希少なのです。
栄養面では根深ネギと同様に、ネギ類特有の香り成分である硫化アリルが含まれ、血液をサラサラにする効果や、体温上昇、血行促進などの作用があります。硫化アリルは加熱することで、甘みが増す成分へと変化するため、加熱したネギは辛みがなくなり、甘く食べやすくなります。
そのほかの成分では、鉄分、マンガン、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸が根深ネギよりも多いのが特徴。根深ネギと比べると、鉄分は2.3倍、マンガン・ビタミンB2・ビタミンB6は2倍、葉酸は1.1倍含まれています。(※1)
鉄分は貧血改善に欠かせない栄養素として有名ですよね。ビタミンB6はPMS(月経前症候群)の症状を改善する効果が期待できるとして、研究が進んでいる栄養素。(※2)また、葉酸は赤血球をつくり、DNA合成に関与するもので、妊娠中や妊娠を望む女性には積極的に摂ってほしい栄養素です。最近ではサプリメントも広がっているので、意識している方も多いのではないでしょうか。
※1出展:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
※2出展:厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/15.html
旬をおいしく味わうための、知っておきたい3つのポイント
<ポイントその1>
加熱して上品な甘みを味わうべし
リーキは加熱用ネギと言ってもよいほど、ヨーロッパでは加熱して食べるのが一般的です。ぷっくりと太く、肉厚なリーキは加熱しても崩れにくく、煮込んだり焼いたりすると甘みが引き出され、旨みすら感じられるほど。さらに、新鮮なリーキは葉の部分も香りがよく、加熱してソースにしたり、スープの具材として食べることもできます。少し硬くなってしまったものは、煮込み料理の臭み消しや、だしとして活用するとよいでしょう。
リーキの旬は冬。11月頃から国産リーキの収穫が始まるので、その甘みをぜひ味わってみてください。
《新鮮なリーキの見分け方》
白い部分がぷっくり太く、ずっしりと詰まってフカフカしていないもの。持った時に重みを感じ、葉付きのものは葉先までみずみずしいものを選びましょう。
<ポイントその2>
煮汁も一緒に食べるのがベスト
リーキに含まれる硫化アリルやビタミンB群は水溶性のため、煮込み料理などに使う時には、ぜひとも煮汁やスープも一緒に食べましょう。これで、大切な栄養素を逃さずに摂ることができます。また、少量の水で蒸し煮にするのもおすすめですよ。
葉酸は熱に弱い性質をもつので、効率よく摂りたい方はオーブンなどの高熱で加熱するよりも、弱火でサッと煮る程度にするのがよいでしょう。
リーキのパイ包みの作り方
【材料】
リーキ…1本、バター…10g、塩…ひとつまみ、水…50ml、冷凍パイシート…1枚、卵黄…適量
【作り方】
①リーキは葉と根を切り落としてよく水洗いし、1.5~2cm幅に切ってフライパンに切り口を上にして並べる。
②塩をふってバターをのせ、水を加えます。ふたをして火にかけ、弱めの中火で10分加熱する。
③半解凍したパイシートを綿棒で伸ばし、フォークを数カ所刺して14cm×7cmの長方形に切る。
④加熱したリーキを3~4切れ、パイシートの片側にのせます。半分に折り畳み、指やフォークをつかって口をとじる。
⑤卵黄を塗り、トースターで色づくまで10~15分焼く。
【作り方のポイント】
バター煮にする時はかき混ぜたりせず、じっくり火を通しましょう。青カビ系のチーズ少量を一緒に包むと、グッと大人の味わいに。包まずに、耐熱皿にバター煮したリーキを入れてパイシートをかぶせ、ポットパイ風に仕上げることもできます。塗り卵黄はなくてもOK。
<ポイントその3>
旬のうちにペーストにして保存
旬の時期にリーキを存分に楽しんだあとは、ペーストにして冷凍保存しておくと、何かと便利です。2cmほどにカットしたリーキをバターで炒め、やわらかくなったら少量の水を加えてミキサーでペーストにします。多めに作って製氷皿に入れたり、フリーザーバックで薄く伸ばしたものを冷凍しておくと、使いたい分だけ簡単に取り出せますよ。
牛乳でのばしてブイヨンと塩こしょうで味を整えれば、リーキのポタージュの完成です。ほかにも、キッシュのアパレイユに加えたり、ホワイトソースに入れてみると、味のベースアップになります。もちろん、そのままバケットに塗って食べるのも、リーキの甘みが楽しめておすすめです。
※アパレイユ……卵やバター、小麦粉など、数種類の食材を混ぜ合わせた生地のこと
上品な甘みと香りに包まれる幸せを
見た目には、ただの太いネギのようなリーキですが、ひと口食べればその違いは歴然。辛みも少なく主張しすぎないリーキは、シンプルに素材を味わう以外に、隠し味に使うもいいでしょう。
加熱したリーキの上品な甘みと香りは、まるでおしゃれなレストランの食事のよう。一般的な根深ネギと比べると価格も少しお高めですが、レストランの雰囲気を手軽に再現できるのなら、実はお得なのかもしれませんね。
イラスト/中川美香
WRITER
野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」