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vol.16 蕾菜<つぼみな>
vol.16 蕾菜<つぼみな>
太い茎に小さな葉がついた蕾菜。野菜なのか山菜なのか、成り立ちを知る人は多くはないでしょう。今回は蕾菜のおいしさを活かすために知っておきたい、3つのポイントをご紹介します。
春を告げるジャパンブランドの新野菜
一見すると、タラの芽やふきのとうなど、山菜のような蕾菜。名前に蕾とついていますが、その正体は、からし菜というアブラナ科の野菜の「芽」。からし菜そのものは中国から伝わった野菜で、葉を食用としますが、この蕾菜は福岡県で品種改良され、春先に出てくる脇芽を食用として流通させたものです。
販売されるようになったのは15年ほど前で、野菜の歴史においては新顔野菜とも言えますね。「博多蕾菜」「子持ち高菜」「祝蕾」として売られていることもあります。
収穫できるのは、脇芽が出てくる1?3月のわずかな期間のみ。立春を過ぎた頃から多く出回るため、春を告げる野菜とも言われます。淡いグリーンの見た目からも春らしさを感じますよね。
栄養面では、GABA(γ-アミノ酪酸)が含まれることが特徴。GABAは交感神経の働きを抑え、興奮状態やイライラを落ち着かせる効果が期待できるとして、ストレスの多い現代社会で注目されている成分でもあります。
旬をおいしく味わうための、知っておきたい3つのポイント
<ポイントその1>
包丁を入れる向きを意識する
脇芽である蕾菜は、中を見ると分かるように、根元のところから新芽が出て伸びている構造です。そのため、包丁を入れる時には、必ず縦方向に切るようにしましょう。横に切ると、葉がポロポロと取れてしまいます。
小さいものは丸ごとでも大丈夫ですが、根元と葉先で固さが違うので、縦切りにして大きさを整えると調理しやすく、料理の仕上がりも安定します。白い付け根の部分に隠し包丁を入れておくのも良いですね。
<ポイントその2>
生食も加熱もOK。調理法を選ばない!
蕾菜は根元に近い方はカリフラワーのようにコリっと、先端にいくにつれやわらかい葉になります。からし菜は、その名の通りピリッと辛味のある野菜なので、葉の部分が多めだったり、成長が進んでしまうと辛味を感じることがあります。
生でコリコリ食感、加熱してホクホク食感。加熱によって変わる食感を楽しむのもおもしろいです。また加熱しても色が鮮やかなのが特徴です。また、火の通りが良いので、調理が手軽なのもうれしいですよね。
<蕾菜のアヒージョ>
【材料】
蕾菜…6個、にんにく…ひとかけ、オリーブオイル…100ml、塩…小さじ1/2、ブラックペッパー…少量
【作り方】
①蕾菜は水洗いし水分を拭き取り、縦に2?4等分にする。
②にんにくは皮と芯を取り、スライスする。
③スキレットや小鍋にオリーブオイルを入れ、にんにくを煮る。
④香りが出てニンニクが柔らかくなってきたら、カットした蕾菜を入れ2分ほど煮る。
⑤仕上げにブラックペッパーをかける。
【ひとことアドバイス】
・短めに煮るとコリっと、長めに煮るとホクホクの食感を楽しめます。
・えびやベーコンなどを加えると旨みがアップします。
・にんにくの臭みが気になる場合は、スライスせず包丁で潰したものを使い、香りが出たら取り出します。
<ポイントその3>
葉も茎も、余さずに食べられる
脇芽を収穫する蕾菜ですが、大きく育った親株ももちろん食べることができます。葉は「からし菜」または「高菜」ですので、サラダや浅漬け、炒めものなど、ピリッとした辛味を活かして幅広い料理に活用できます。茎はブロッコリーやカリフラワーのように、外側の固い皮をむいて、中のやわらかい部分を食べることができます。
広く流通する部分ではありませんが、産地近くでは食べられていますので、機会があればぜひ味わってみてくださいね。
蕾菜で春の訪れを楽しもう
寒い冬を越えて、春らしさが感じられる頃に、大きな株から芽吹く蕾菜。寒さはまだ残っていても、畑では着々と春に向けて新しい命が育っています。まっすぐ太く出てくる蕾菜には、力強い生命力さえも感じることができますよね。ぜひ、旬の野菜から春を感じてみませんか。
イラスト/中川美香
WRITER
野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」