野菜をおいしくする、愛すべき道具たち vol.2 <ピーラー編>
こんにちは。まんぷくベジ編集部です。
みなさんは、ピーラーを使っていますか? ただ野菜の皮を剥くサポートアイテムだと思われがちですが、ピーラーを使えば包丁やまな板なしで野菜の下ごしらえができたり、調理の時間短縮ができたり、さらには野菜をよりおいしく調理することも可能です。手頃な価格のものから、細部までこだわり抜かれたもの、特定の野菜に特化したもの、デザイン性に富んだものまで、さまざまな種類があります。
今回は、ピーラーを日本一数多く展開しているメーカー、貝印株式会社に、ピーラーの歴史や魅力、そして選び方のコツを伺いました。
知るほどに奥深いピーラーの世界を、一緒に見てみましょう。
ピーラーの浸透は、スーパーマーケットの大規模化や洋食文化とともに
ピーラーは、1947年にスイスで発明されたと言われている調理器具です。日本での普及が始まったのは1960年代後半で、当時はピーラーではなく、「皮引」と呼ばれていました。
そもそも1960年代は、日本の食が大きく変化した時代です。1963年に初めてカレーライスのルーが登場し、洋食文化が急速に浸透していきました。生野菜サラダが一般化したのもこの時代です。家庭で手の込んだメニューが好まれたのに伴い、じゃがいもや、にんじんなどの皮を短時間で剥く道具としてピーラーが注目を集めるようになったのかもしれません。
ライフスタイルの変化と共に、貝印が手掛ける「貝印キッチン」シリーズが店頭販売を開始し、「皮引」も1960年代後半に誕生しました。この頃は、日本のスーパーマーケットが大規模化し、調理器具も店頭に並ぶようになった時期でもあります。「皮引」は、レードルなどと専用スタンドに吊るして販売されたそうです。
当時の「皮引」は、今見るT型ピーラーに似た形状をしていますね。この花柄のデザインが昭和レトロで、かえって新鮮に感じられます。
時代とともに変わる食トレンドやキッチン事情、ニーズに合わせて進化し続け、60年後の今、貝印が提供するピーラーは70種類以上にまで増えています。
ピーラーの切れ味が良いと、おいしさや食感も変わる!
貝印のピーラーの大きな特徴は、その切れ味の良さです。実際に、編集部内でも「SELECT100®T型ピーラー」を試しましたが、野菜にピーラーを当て、動かし始めると驚くほどスムーズ。スーッと野菜の表面を走っていく感触は初体験でした。皮を剥いた後のキュウリの表面は、すべらかでピカピカに光っていました。
では、ピーラーにとって、この切れ味がどうして重要なのでしょうか。
剥いたり切ったりした食材の断面は、切れ味が良いとなめらかで、反対に切れ味が悪いとギザギザになります。野菜の場合は、繊維(細胞壁)をなるべく壊さずに切ることで旨味や水分、栄養素を逃がさなく調理できるので、刃物はできるだけ切れ味の良い刃物で調理すると良いそうです。
つまり、野菜のおいしさを最大限に活かすためには、調理の第一段階である切り方にもこだわってみるのが正解ということですね。
また、切れ味の良いピーラーで切ると、舌触りや食感も変わります。
例えば、野菜嫌いの家族に食べてもらう工夫として、ピーラーで薄く剥いてサラダに加えたり、煮たりする方法も。薄くスライスして形を変えることで、苦手意識が軽減されるかもしれません。
初心者から料理愛好家まで、選ぶならこの1本!
貝印が展開するピーラーは、現在70種類ほどあります。膨大な種類の中から自分に合ったものを選ぶには、どうすればいいのでしょうか。そこで、代表的なピーラーを形状やライフスタイル、使用シーンに合わせてご紹介します。
<まずは1本持っておきたい!野菜初心者のピーラーデビューには…>
SELECT100®T型ピーラー(1,430円・税込)
貝印のピーラーの中で、最も購入されているのがこの「SELECT100®T型ピーラー」です。T型のピーラーはほとんどの野菜に使えて、野菜初心者が最初に持つ1本といえる大定番です。
貝印のT型ピーラーの特徴は、野菜の表面をスーッと走る感触と、切れ味。また、刃の部分が少し波打つように加工されており、これにより食材を切ったときの“切り離れ”がしやすくなっています。
持ち手部分にもこだわりがあり、人間工学に基づいて考案されたウェーブ型のハンドルは、調理のプロに何度も試してもらって作り上げた形状です。
サイドについているポッチにも注目。じゃがいもなどに使う「芽取り」というパーツです。穴が開いているので、取り除いた欠片が抜けやすく、使いやすい。そして全ステンレス製なので、お手入れもしやすく、清潔に使うことができます。
<包丁のように使える!料理愛好家がさらに1本追加するなら…>
SELECT100®I型ピーラー(1,430円・税込)
I型ピーラーは、T型ピーラーにプラスして持ちたい、便利なアイテムです。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、欧米ではよく使われています。特徴は、包丁で皮を剥く感覚で使える点です。特に、りんごなどの丸いものを剥くのに適しています。
また、小さな野菜や丸い形状の野菜は、T型では剥きにくい場合もありますが、手の動きがフルーツナイフを扱っているようにコンパクトになるI型を使えば、小さなものでも剥きやすいとのことです。
<キャベツの千切りはおまかせ!調理の時短に欠かせないなら…>
SELECT100®ワイドピーラー(2,200円・税込)
16センチほどのワイドな刃がついたピーラーです。キャベツの千切りに特化したピーラーですが、大根の桂むきをしたり、広い面積の野菜を剥いたり切ったりするのにも適しています。幅広な刃で剥けるので、調理の時短にもなります。
包丁でキャベツの千切りをすると、おいしい千切りにするには、ある程度の技術が必要になります。しかし、このワイドピーラーなら誰でも簡単に、均一に細く切ることができ、仕上がりがふんわりとします。
編集部内でも、実際にキャベツの千切りを体感してみましたが、キャベツの断面にピーラーを当てて手を動かすだけで、シュッシュッと簡単に千切りができました。空気が含まれていてふんわりしているのが見た目でもわかり、さらに食べてみると、食感もクセがなくいつもよりやわらかく感じられます。まさに、お店で出されるような千切りが自分でもできて感激でした。
<お子様にも!安全性の高いピーラーを選ぶなら…>
手のひらキャベツピーラー(878円・税込)
透明のグローブのような不思議な形をした新感覚ピーラーです。緑色のフックに指をはめて、食材を手のひらでなでるように動かすだけで、キャベツなどが簡単に千切りにできます。
このシリーズにはコンパクトなタイプもあり、丸いじゃがいもなども安全に皮を剥くことができます。お子様のお手伝い用に選ばれることもあるそうです。
<痒いところに手が届く!特化型のピーラーを選びたいなら…>
Broad Beans(ブロード ビーンズ)ラクラクかぼちゃピーラー(1,045円・税込)
「かぼちゃの皮が硬くて剥きづらい」という声に応えて開発されたピーラーです。硬い皮を剥くときは、特にケガをしやすいですが、こういった専用のピーラーがあると安心です。
形状はくちばしのように可動性があり、刃の反対側にはツメがあります。これをかぼちゃの実に当て、パクパクと動かすことで皮が剥けます。かぼちゃピーラーという商品名ではありますが、りんごやじゃがいも、滑りやすい里芋なども剥くことが可能です。
ほかにも貝印の特化型ピーラーには、トマト用、コーン用、カニ用、くり用などもあるそうです。
ピーラーの安全な使い方とお手入れ3つのコツ
ピーラーは野菜調理の名脇役。今までなんとなく怖がっていた人も、いつ買ったか思い出せないようなものを漫然と使い続けてきた人も、この機会に見直して!というのがまんぷくベジ編集部の結論です。手軽に使えますが、包丁と同じく「刃物」でもあるので、日々のキッチンライフの相棒とするには、ちょっとしたコツがあるのもお忘れなく。
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刃の進む方向と、添える手や指の位置に注意
ピーラーは誰でも比較的容易に扱うことができる調理用具です。ただし、間違った使い方をすれば、刃で指をケガする可能性があります。例えばT型ピーラーの場合、慣れるまでは食材をまな板の上に置いて使うことを基本として、刃が進んだときに食材に添える手や指に刃が当たらないように、ピーラーと食材の正しい位置関係を意識してください。
- 切れ味の悪いピーラーは危ないと心得て
切れ味が悪いと不自然な場所に力が入ってしまい、ケガの原因となりがちです。安全に使うためにも、切れ味の良いものを選ぶことが重要です。刃は日常的に使うことで消耗します。替え刃式のピーラーも存在しますが、替え刃ができない場合は買い替えを検討しましょう。毎日使うと気付きにくいものですが、刃がスーッと走らない、剥けずに滑る場合は買い替えの時期かもしれません。
- サッと洗って湿気の少ない定位置へ
貝印のピーラーのほとんどは食洗機でも洗うことが可能なため、日々のお手入れは比較的容易に行えます。手洗いの場合、フライパンなど油ものと一緒になる前に、サッと洗剤とスポンジで洗うのがおすすめです。乾燥した布で拭いて、湿気のない場所へ。刃物なので定位置を作ってください。調理の初段階で使う道具なので、手に取りやすい場所にしまえるといいですね。
多様な形状、機能性ある製品が揃っており、選りすぐるのに悩むほど進化していたピーラーの世界。キッチンに1本、2本と揃えることで、野菜調理が格段にスピーディになったり、おいしくなったりと、いいことずくめです。
貝印さんによると、切れ味の程度や握りやすさは、個々の好みを一番大事にしてほしいとのこと。好みにこだわるほどではない方は、まずは、評価の高いピーラーを試してみるのも一つの手段かもしれません。
自分に合ったものと出会って、野菜をおいしくいただくための一歩にしませんか。
取材協力/貝印株式会社 刃物の町、岐阜県関市で1908年に創業。カミソリや爪切りなどの衛生用品から、刃物やピーラーなどの調理器具まで、私たちの生活に密接なアイテムを提供しています。 |
WRITER
フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。高校生と中学生の2人の娘をもつ母であり、子どもたちの野菜嫌いを克服させるべく、献立に頭を悩ませる日々。野菜不足になりがちなので、毎日の食卓には手作りのピクルスを添えるよう心がけている。