古くから正月にはいくつかのしきたりがあり、その一つにおせち料理があります。
では、なぜ正月におせち料理を作る習慣があるのでしょうか。
それは、「年神様」と呼ばれる神様をお迎えし、共に新年をお祝いするためです。
年神は、先祖神であるとともに、実りをもたらす豊作の神様といわれています。
地域によって違う、食べ物のしきたり
正月のしきたりには、地域によって違いがあります。
京都では、元旦に大福茶(おおぶくちゃ)というお茶をいただきます。
大福茶とは、一年の無病息災の祈願と、新年のお祝いの気持ちを込めて飲むお茶のこと。梅干しや昆布にお茶を注いで作り、お雑煮などを食べる前に飲みます。
また、北海道の一部地域では、おせちを大晦日に食べる習慣があります。元旦に食べることを常識としていた人にとっては、驚きですよね。
なぜ、北海道では、大晦日におせちを食べるのでしょう。その理由は、旧暦による1日の考え方にあります。
旧暦では、一日の始まりは日没からと考えられていました。このことから、大晦日の日没には新年と考えられ、おせちを食べるようになったといわれています。
さらに、地域性があらわれる正月の食べ物の一つが、お雑煮です。
一般的に、関東より東は四角い餅を使った醤油味のお雑煮、関西より西は丸餅を使った白味噌味のお雑煮を作ります。
このお雑煮、県によっても味付けが違うことを、ご存じでしょうか?
例えば、香川県では、白味噌にあんこ入りのお餅を入れます。また、岩手県は、なんと汁をくるみだれにし、餅をつけて食べるそうです。
自分の家のお雑煮はどうでしょうか? その由来などを調べてみるのも、面白いかもしれませんね。
野菜を使ったおせち料理5選
おせち料理には、一つ一つに由来と意味があります。
ここでは、野菜のおせち料理を5つ、厳選してご紹介します。
1. れんこん
れんこんの穴を通して、「将来の先を見通す」という願いが込められています。おせち料理では、「酢ばす」という、酢でしめた料理が一般的です。
2. たけのこ
まっすぐ、丈夫に伸びることから、二つの願いが込められています。
一つは、「すくすくとまっすぐ伸びるように」という、健康に対する願いです。
そして、もう一つは、上を目指して成長することから、出世への願いが込められています。
おせち料理では、土佐煮にするのが一般的です。
3. くろまめ
健康でマメに働けるように、という願いが込められています。
正月の黒豆といえば、艶がありふっくらした煮豆を想像しますよね。しかし、なかなか綺麗に仕上がらない、という悩みも多いはずです。
重曹(じゅうそう)を使用したレシピだと、簡単に艶のある黒豆に仕上がります。おせち料理に入れるときは、ぜひ試してみましょう。
4. さといも(八つ頭)
二つの願いが込められています。
一つは、子孫繁栄への願いです。これは、さといもが、親芋からたくさんの小芋をつくることから想起されました。
もう一つは、頭(かしら)となって出世するように、という願いです。
この出世への願いは、さといもの一種である「八つ頭」の名前と、小芋のでき方に由来します。
八つ頭は、親芋と小芋がわかれずに1つの塊になった芋です。親芋と小芋がくっついている様子が、8つの頭のように見えることから、八つ頭と呼ばれるようになりました。
この八つ頭のように、大きな頭となって出世する、という意味が込められています。
八つ頭は、一般的な里芋に比べると粘り気が少なく、ホクホクとした食感が特徴です。
5. だいだい
正月飾りのしめ縄につけたり、鏡餅にのせたりします。実が熟しても落ちづらいことから、「代々」家が栄える、と考えられるようになりました。
また、香りで邪気を払うという意味も込められています。
しめ縄は、年神様に、その場所が神聖であることを示すために飾られます。
昔の日本の人々は、その年がよい年になるように願いを込めて、正月におせち料理や飾りをつくりました。しかし、現代では、その習慣も薄れている部分もあります。
家にいる時間がふえた今、いつもより丁寧におせちを仕込んでみるのはいかがでしょうか。
きっと、新しい発見がありますよ。
WRITER
管理栄養士。栄養・レシピ・ヴィーガンなど、食に関する記事をWEBコンテンツで執筆。その他、カフェのメニュー開発、料理動画制作などをして活動。これまでは給食提供のほか、離乳食指導や食育指導に従事。幼少期から茶道を習っており、日本文化が好き。こども食堂を開くのが夢!
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