味が濃く香り豊か!さいたまヨーロッパ野菜の魅力とは?
いまやヨーロッパ野菜の一大産地として知られる埼玉県さいたま市。市内の若手農家グループや地元シェフ、種苗会社、卸売流通業者などが協力して、さいたま産ヨーロッパ野菜の地産地消活動に取り組む「さいたまヨーロッパ野菜研究会」、通称「ヨロ研」がその立役者です。
当初、レストランやホテルのニーズに応え、プロ向けに栽培が始まったさいたまヨーロッパ野菜は、普及とともに少しずつ販路も多角化し、拡大。カリフローレやカーボロネロ(黒キャベツ)、ゴルゴ(渦巻ビーツ)など年間約70品目が出荷され、一般の人々も手にする機会が増えてきました。
2013年の立ち上げから携わっているさいたまヨーロッパ野菜研究会事務局の福田裕子さんに、さいたまヨーロッパ野菜の魅力についていろいろな角度からお話を伺いました。
さいたまでヨーロッパ野菜?!一大産地の理由とは?
―――さいたまヨーロッパ野菜が誕生して10年。地域ブランドとして定着し、さいたま市内では学校給食にも地元産ヨーロッパ野菜を使用した献立が組み込まれ、顔なじみになっているそうですね。そもそもなぜ、さいたまでヨーロッパ野菜なのでしょうか?
ヨーロッパ野菜研究会事務局 福田裕子さん(以下、福田さん):さいたま市は子育てしやすい街ということで、いろいろな街から若い夫婦が流入してきています。世帯の平均年齢が比較的若いこともあり、和食よりも洋食が好きな人が多いですね。市内にはイタリアンやフレンチだけでも200軒以上あり、ワインやパスタ、トマト、チーズの一世帯あたりの購入額は日本トップクラスなんです。
―――さいたま市は洋食のニーズが高い街なのですね!
福田さん:はい。ただ、レストランのシェフたちは「本場のヨーロッパ野菜を使いたいけど手に入らない」「輸入品は高価なうえに鮮度が低い」といった悩みを抱えていました。そんな折、市内にあるトキタ種苗が栽培の難しいヨーロッパ野菜を日本向けに品種改良した種を発売したのです。ヨーロッパと違い高温多湿な日本でうまく育ってくれるのか、作ったとしても知名度が低く、売れ残る可能性が高いため、お声がけした農家さんたちからは全部断られてしまいました。そんななか、若手農家さんたちが新しい野菜づくりにチャレンジしてくれることになり、2013年春にヨロ研がスタートしたのです。
ヨーロッパ野菜が洋食文化に欠かせない理由
―――なじみのないヨーロッパ野菜を日本で育てるうえで、どのような苦労があるのでしょうか?
福田さん:日本はイタリアと比べると雨の量が圧倒的に多い。梅雨や台風の時期には、根が流れてしまったり、湿気で病気になってしまうことがよくあるんです。はじめはノウハウもなく苦難の連続でしたが、土の成分を変えたり、水はけをよくしたり、栽培技術をどんどん上げていきながら乗り越えています。
―――逆にいうと、日本の野菜は日本の気候に適応した、雨や湿度にも強い野菜ということなのですね。
福田さん:日本で作られている野菜のほとんどは地中海あたりから伝わったものが多いのですが、日本で育ちやすいように品種改良されているんです。ナスを例にあげると、日本のナスはえぐみが少なく、みずみずしく、水ナスにおいては漬物や生で食べてもおいしいですよね。
一方、イタリアのナスは水分が少なくアクがあります。イタリアではナスはオリーブオイルで炒めた後にスープにして食べたりするので、みずみずしい必要はなく、むしろオリーブオイルと合わせて味がしっかり乗るような品種が求められるのです。
―――なるほど。その土地の気候や食文化に適応した形に、種も改良されているのですね。そして野菜に合わせた料理が生まれるという点も興味深いです。日本の野菜と比べてヨーロッパの野菜の大まかな特徴は何でしょうか?
福田さん:レストランのシェフからはよく「味が濃い」と言われます。基本的に肉やチーズ、オリーブオイルやバターと合わせても負けないような個性を持っているのが特徴ですね。香りが強く、特有の苦味や辛さも、大トロにわさびを乗せるように、お肉と合わせるとそれが旨味に変わるというような野菜が多いです。
―――そうなんですね。イタリアンやフレンチといった洋食料理には、ヨーロッパ野菜が欠かせない理由が分かりました。
もう躊躇しない!ヨーロッパ野菜を手軽においしく自宅でも
―――最近はスーパーでもヨーロッパ野菜を見かけることが多くなりましたが、依然どうやって調理したらいいか分からないので、手に取るのを躊躇してしまいます。福田さんがおすすめする、さいたまヨーロッパ野菜ベスト3と、その簡単な料理を教えていただけますか?
福田さん:はい。まずはヨロ研の中でも一番売れている野菜「カリフローレ」ですね。これはスティック状のカリフラワーで、実はヨロ研メンバーでもあるトキタ種苗が品種改良して生み出した、さいたま生まれのイタリア野菜なんです。最近は全国的に産地が増えていますので、スーパーなどでもよく見かけるようになりました。甘くてシャキシャキしているので、ブロッコリーやカリフラワーと同じようにさっと茹でてマヨネーズをつけるだけでおいしく食べられます。
福田さん:次に季節柄「トレビス(ラディッキオ)」もおすすめ。赤チコリの仲間で丸型や細長型など種類がたくさんあるのですが、美しい赤紫色を活かしてサラダにするのが人気です。ですが、実は焼き野菜として四つ割りにしてじっくりグリルしてもおいしいんです。イタリアでは基本的に火を通します。オリーブオイルで焼いて最後にとろけるチーズをかけて食べるとワインもすすみますよ。
最後は「カーボロネロ」。黒っぽい深緑色をした葉キャベツで、基本的にスープや煮込み料理に使います。一番簡単で私もよく作るのが、ツナ缶を使う煮込み料理。カーボロネロをざくざくとひと口大に切り、ツナを油ごと鍋に入れて水を加え20分ほど柔らかくなるまで煮込むだけ。葉の凸凹がスープの旨味を含んで油揚げのようなおいしさになります。1月、2月の厳冬期には葉の縮れが強くなり、一段とおいしさが増しますので、これからの季節におすすめです。
―――どれも簡単なうえ、お酒にも合いそうです!ヨーロッパ野菜へのハードルが一気に下がりました。スーパーで見かけたら、今度こそ躊躇することなく手に取って、洋風おかずを作ってみたいと思います。
給食でも定番!うまみたっぷりのミネストローネが郷土の味になる日
―――さいたまヨーロッパ野菜を手軽にたっぷりいただけると、ヨロ研のミネストローネが評判ですね。このミネストローネについて詳しく教えていただけますか?
福田さん:このミネストローネは、さいたま市岩槻区にある私たちのアンテナショップ「ヨロ研カフェ」の看板メニューです。ヨーロッパ野菜は形が不揃いな規格外も出やすいため、そうした野菜を細かく刻んで活用できる料理としてミネストローネを提供したところ人気メニューとなりました。地元産の野菜をたっぷり使用するうえ、プロのレシピで作るミネストローネは学校給食でも人気で親しまれています。お客さまからの「持ち帰りたい」「ギフトで贈りたい」という声に応えて、レトルトパウチでの販売もスタートしました。
ミネストローネというとトマトの味に頼っているものが多いなか、ヨロ研のミネストローネはそれとは一味違うんです。トマトだけでなく、いろんな地元野菜のうまみを詰め込んでいるため、野菜の量が圧倒的に多く、まさに食べるスープ。さいたま市のふるさと納税でも大変人気なんですよ。
―――そのミネストローネはヨロ研カフェだけでなく、ふるさと納税をはじめECサイトでも購入できるのですね。これなら、さいたま市以外にお住まいの方もおいしさを体感できますね。
最後になりますが、ヨロ研の今後の展望をお聞かせください。
福田さん:日本の農業は担い手不足の問題など厳しい現状がありますが、さいたま市においても同様の課題を抱えています。そこで私たちは20年先も続けられる都市農業のスタイルを作るという目標を掲げて取り組んでいます。そして「さいたま=ヨーロッパ野菜」というブランド認知をもっと全国に広げていきたいですね。
もう一つは、子どもたちが将来、郷土を誇れる食文化をつくること。実は埼玉県は、郷土愛ランキングで47位なんです。ですから、そのランキングを押し上げるべく、子どもたちにはさいたまで生まれ育ったことを自慢してもらえるように、その取り組みとして地元産ヨーロッパ野菜を作ったり、学校給食で提供したり、郷土を誇れる食文化をつくっていけたらと思っています。
さいたまヨーロッパ野菜のお取り寄せはこちら>
さいたまヨーロッパ野菜研究会のミネストローネ(レトルトパウチ)はこちら>
さいたまヨーロッパ野菜研究会事務局 福田裕子(ふくだ・ゆうこ)さんプロフィール 1971年埼玉県川口市生まれ。リッカ・コンサルティング代表。経済産業大臣登録中小企業診断士や埼玉県よろず支援拠点コーディネーター、大宮・浦和経済新聞記者など多方面での活動も。2013年より市の外郭団体、さいたま市産業創造財団としてさいたまヨーロッパ野菜研究会事務局を務め、2023年3月に独立し、同事務局を民営化。好きな野菜は、春が旬のイタリアのそら豆「ファーベ」。若どりした小さな状態の豆は生でも食べられ、ジューシーでクリーミー。ワインのお供として、小さくカットしたペコリーノチーズと一緒に食べるのが好き。 |
【あわせて読みたい】あの人と“食べる”を話そう まんぷくべジinterview
あの人と“食べる”を話そう まんぷくべジinterview VOL.5 ~とうふの魅力を再認識! 30年愛される名物料理 | ||
あの人と“食べる”を話そう まんぷくべジinterview VOL.4 ~“ひと粒いちご”に一目惚れ!原宿ベリーの魅力に迫る | ||
あの人と“食べる”を話そう まんぷくべジinterview VOL.3 ~老舗ブランドが手がける新サステナブルカフェとは? |
WRITER
敬食ライター。フードアナリスト。都内飲食店を中心にマルシェ、農家、ブルワー、コーヒークリエイター、料理研究家など幅広く取材。好きな場所は道の駅とアンテナショップ。出身地の青森県七戸町(旧天間林村)は“にんにく”の名産地で、シーズンになると放課後は裏の畑で収穫や出荷のためのネット詰めを手伝っていたことも。おやつは自家製黒にんにく。