静かな豊かさのなかで
いつか田舎暮らしがしたい。二拠点生活ができたら畑を始めたい。自分で収穫したもので食事が作れたら。そんな淡い、理想の暮らし。
関東エリアでマンション住まいのMayamoonさんの生活を覗いてみると、生活を大きく変えなくとも、心地よさとつながれる。自然がそばにある。暮らしが、カラフルになる。
絵描きで詩人のMayamoon さんの連載「Mayamoon まちなかで自然暮らし」は、そう予感させてくれます。
畑をはじめたのは今(2025年2月現在)からおよそ14年前のこと。
東日本大震災がきっかけで、少しでも食べ物を自給できるようになったらいいなと思い、市民農園で家庭菜園をはじめた。
当時はフルタイムで働きながら子どもを育てて大忙しだったけれど、なるべく手間をかけない、無理せず続けられる栽培を模索しつつやってきた。
最初は本当に何も分からない状態で、続けていくことで少しずつコツをつかんでいって、農薬や肥料を使わない無肥料栽培にたどり着いた。
毎年同じ様にやってもうまくいったりいかなかったりするけれど、自然と共存している感じがして心地よい。
夕方になると散歩をかねて畑にいく。
私が住んでいるあたりは駅前に高層マンションが立ち並び、都心までもアクセスのよい都市だけど、少し歩くと昔のままの景色も見受けられる。
都会と自然がうまく調和していて、どちらの良さも味わえる。
冬の畑はそこまでやることもないので、クーラーボックス(紐や袋など農具を入れて畑に置いてある)に腰かけて水筒のお茶を飲みながらひと休みする。
冷たい空気とほうじ茶の湯気。
春を待つ植物の上を鳥たちが空高く飛んでいく。
徐々に空の色が変わっていく。
この穏やかな時間が何より心の栄養となる。
畑には市民農園仲間のおじさんがいて、時々おしゃべりをする。
「今年の大根はどうだ?」とか、今話題になってきるニュースのこと(彼らは基本テレビと新聞が情報源)、ここが痛いあそこが痛い、入院していたなどの健康話。
自分の父親くらい年の離れたおじさんたちの身の回りの話を聞くのが結構楽しい。
みんな元気でこれからも畑を続けていけるように願っている。
今日は紅芯大根、キャベツ、ブロッコリー、黄色いカブを収穫。
紅芯大根はすし酢につけてピクルスにする。
他の野菜は蒸籠で蒸してリンゴのドレッシングで和えて食べる。
リンゴのドレッシングはリンゴとお酢とみりんをフードプロセッサーで攪拌しただけ。
酸味と甘味が際立って炒め物の調味料としても活躍している。
少しでも自給自足をしたくてはじめた畑だけど、今はそれが目的ではなくなっている。
季節のうつろいを肌で感じること、人とのささやかな交流、自分もまた自然のなかの一部であることを改めて認識すること。
日常の延長線上にある畑はそんなことを教えてくれる。
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Mayamoon 絵描き、詩人。無農薬無肥料で野菜やハーブを育てる。自費出版のZINEや、アート作品を手がけるだけでなく、オンラインコミュニティや哲学対話を主宰するなど、幅広く活動。新しく芽生えた夢は、『赤毛のアン』の故郷、プリンス・エドワード島に行くこと。 |
WRITER
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絵描き、詩人。無農薬無肥料で野菜やハーブを育てる。自費出版のZINEや、アート作品を手がけるだけでなく、オンラインコミュニティや哲学対話を主宰するなど、幅広く活動。新しく芽生えた夢は、『赤毛のアン』の故郷、プリンス・エドワード島に行くこと。