切り方を極めて、辛味と食感の変化を愉しむ「オニオンサラダ」

WRITER/小島カスミ子

定番野菜が極上な一菜一皿に
たまねぎ

家庭ではもちろん、中食や外食産業でも消費の多いたまねぎ。炒めものや煮ものに使うことも多いですが、シャキふわなサラダもおいしいですよね。生で食べる時は、切り方に工夫をすると、風味や食感が変わることをご存知ですか?

たまねぎを切る向きに、そのカギが隠されているのです。旨みや栄養を逃さずに、辛味だけをほどよくとばすと、オニオンサラダは驚くほどおいしくなります。今回は、そんなたまねぎと向き合っていきましょう。

たまねぎ

たまねぎ

特有の辛味と香りは、硫化アリルという成分によるもの。殺菌作用があるほか、ビタミンB1の吸収を高めてくれる働きもあります。また、血液凝固をゆっくりにして、血中脂質を減らす働きがあることから、血液がサラサラになる効果も期待できます。皮にはフラボノイドが含まれ、煮出して使われることも。
 
<おもな栄養素>
ビタミンB6、硫化アリル、ケルセチンなど

歴史は古く、各国料理に使われる世界共通の定番野菜

ザルにのせたたまねぎ

たまねぎは中央アジアが原産で、最も古い作物のひとつ。紀元前5000年頃にはエジプトやヨーロッパですでに食用とされていたと言われています。17世紀にアメリカにもたらされたものが、その後明治に入って日本に伝わり、北海道と泉州(大阪)の2つのルートで持ち込まれました。

どちらの地域も、現在においてもたまねぎの産地となっています。この時に導入された「イエロー・ダンバース」という品種を原種として、今の日本のたまねぎの品種が作られていきました。たまねぎの産地として有名な淡路島は、泉州たまねぎの栽培技術をもとに拡大していったとされています。

一般的に食べられている黄たまねぎは、辛たまねぎ群。サラダたまねぎなどの白たまねぎは、甘たまねぎ群。この2つに加えて、赤たまねぎと小型のペコロスで、たまねぎは大きく4つに分類することができます。

生と加熱によっても風味や食感が変わるたまねぎは、家庭料理でもちろんのこと、中食や外食産業においても欠かすことのできない野菜と言っても過言ではないでしょう。さらに、各国料理でもたまねぎの使用頻度はとても高く、世界で共通して定番的に使われる野菜と言えます。

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

収穫量は年間120万トン!野菜41品目の中で3番目なのよ! ※1

※1 出典:農林水産省「令和4年産野菜(41品目)の年間計の収穫量」

切り方の工夫で、辛味が抜けてふんわり仕上がるオニオンサラダレシピ

オニオンサラダ

たまねぎは加熱の有無だけでなく、切り方においても風味や食感に変化が起こる野菜です。
生たまねぎをシャキふわで楽しみたいけれど、辛味がどうしても残ってしまい苦手意識がある方も多いのではないでしょうか?

たまねぎをはじめ野菜には繊維があり、包丁を入れる時に「繊維を断つ」か「繊維に沿う」かで、仕上がりが大きく変わってきます。
生でオニオンスライスとして楽しむ時は、「繊維を断つ」のがおすすめ。繊維が断ち切られることで、辛味成分が抜けやすくなり、ふんわりとした食感が実現します。反対に、炒めものなどでしっかり食感を残したい時は、繊維に沿って切ると繊維が残るため、加熱してもくたっとならずに食感よく仕上げることができます。

半分に切ったたまねぎ 薄くスライスしたたまねぎ

 

また、辛味成分の硫化アリルは揮発性があることが特徴。スライスした後は、全体をほぐしてしっかり空気に触れさせることで辛味が抜けていきます。15分ほどを目安に、空気にさらしましょう。水さらしをしてしまうと、辛味成分とともに、旨味成分や水溶性の栄養素も抜けてしまうので、水さらしは極力しないのがおすすめです。

スライスしたたまねぎ  

 

ほどよく辛味が抜けたオニオンスライスは、シンプルにいただきたいですね。定番のポン酢しょうゆにひと手間加えて、太白(たいはく)胡麻油を混ぜてみてください。胡麻を煎らずに絞られる太白胡麻油は、胡麻油特有の香りはなくコクとすっきりとした後味。素材の旨みを引き出すため、有名シェフたちも手放すことのない万能オイルです。とてもシンプルなのに、たまねぎやポン酢しょうゆの旨味がグッと引き出され、とても贅沢な一皿が完成します。

 

ふんわり仕上がるオニオンサラダ

 

材料
・たまねぎ…200g(約1個)
・ポン酢しょうゆ…大さじ1
・太白胡麻油…大さじ1
・かつおぶし…お好みで

 

作りかた
① たまねぎは皮をむき、繊維を断つようにして薄くスライスする。
② 全体をほぐし、15分ほど空気に触れさせる。
③ ポン酢しょうゆと太白胡麻油をよく混ぜ合わせる。
④ お皿にたまねぎを盛り、上から③をかける。
⑤ お好みでかつおぶしをのせる。
 

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

水にはつけず、空気に触れさせて辛味をとばすのよ!

同じだけど違うことばかり、たまねぎと新たまねぎ

新たまねぎ

春に出回る新たまねぎ、通常のたまねぎとの違いをご存知ですか?
じつは、収穫時期が違うわけではなく、収穫後すぐに出荷されるものが新たまねぎなのです。

新たまねぎは、収穫後すぐに出荷されて店頭に並びます。一方で、通常のたまねぎは一度乾燥させてから出荷されているのです。そのため、新たまねぎは皮がやわらかくみずみずしいのが特徴。通常のたまねぎは保存性を高めてあるので、長期保存や貯蔵に適している訳なのです。1年中たまねぎを買うことができるのは、この貯蔵品があるおかげなのですね。そして、収穫時期にだけ出回る新たまねぎは、春の味覚として人気があります。

同じたまねぎではありますが、家庭での保存方法は全く異なります。新たまねぎは乾燥に弱いため、ひとつずつキッチンペーパーなどで包んでポリ袋に入れたら、野菜室で保存し、1週間くらいで食べ切るようにしましょう。通常のたまねぎは、風通しの良い室内での保存でOK。湿気が多く暗いところでは芽が出やすくなるため、夏場は野菜室に入れておくのもいいでしょう。

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

新たまねぎは、野菜室で保存して早めに食べなきゃダメよ!

まとめ

料理のジャンルを選ばず、万能に活躍してくれるのは、たまねぎが古くから作られ、世界中で食べられているからなのですね。ここまで幅広い料理に使うことができるのは、たまねぎの右に出る野菜はないかもしれません。当たり前に常備されている野菜であり、万能であるがゆえに、意外と知られていない切り方で変わる風味や食感の違い。辛味の処理の仕方を知っておくと、生食で楽しむレシピのレパートリーがさらに広がることでしょう。

WRITER

小島カスミ子
Kasuiko Kojima

野菜や果物のおいしさやすばらしさ伝えるべく、時には優しく、時には厳しくアドバイス。いつもしっかり者でありながら、野菜のこととなると、ついついムキになってしまうかわいらしい一面も。中の人は、野菜ソムリエプロ&管理栄養士の小島香住さん。