【野菜のキホン 栽培編①】
スーパーの一角にある産直コーナーで新鮮な野菜や果物が買えたり、ネット通販でこだわりの有機野菜がお取り寄せができるようになったりと、最近はさまざまな方法で野菜が選べるようになりましたね。また、コロナ禍の影響を受けている生産者さんの応援目的だったり、おうち時間の楽しみにと、通販を積極的に利用している方も多いのではないでしょうか。
ところで最近、「慣行栽培」や「有機栽培」、「自然栽培」など、こだわりの栽培方法をうたっている野菜をよく見かけますよね。言葉自体は聞いたことがあっても、そのちがいまでしっかり理解できていますか? そこで今回は、代表的な栽培方法についてご紹介します。
栽培方法の違いは、農薬と化学肥料の割合にあり!
【慣行栽培】
慣行栽培とは、露地栽培やハウス栽培など、一般に行われている栽培方法のこと。農薬や化学肥料の導入によって生産性が向上し、安定的に野菜を収穫できることが最大のメリットです。
【環境に配慮した栽培】
農業の自然循環機能を維持・増進するため、化学合成された農薬や肥料の使用を低減したり、できるだけ排除をするなど、環境に配慮した栽培方法も行われています。「特別栽培」や「有機栽培」「自然栽培」などがあります。
<1.特別栽培>
別栽培とは、「化学合成農薬(節減対象農薬)の使用回数」および「化学肥料の窒素成分」が、その農産物が生産された地域で慣行的に行われている使用状況に比べて、どちらも50%以下で栽培する方法を指します。ただし、どちらか一方だけが低減されている場合には対象外になります。
この方法によって栽培された特別栽培農産物は、この農薬および化学肥料の低減状況をパッケージなどに表示するか、QRコードからインターネットで情報を確認できるようにしておく必要があります。商品パッケージにQRコードが表示されている場合は、スマホで読み取ってみると、低減状況を確認することができます。
<2.有機栽培>
有機栽培とは、化学的に合成された肥料や農薬を使わずに、堆肥による土づくりを行い、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本にしています。このように、環境への負荷をできる限り低減する方法で栽培された農産物のことを有機栽培農作物と言います。
※遺伝子組み換え技術……ある生物から遺伝子(DNA)を取り出し、別の生物のゲノムに導入することで、新しい性質を付与する技術のこと。
特別栽培農産物が農薬・化学肥料が50%以下であるのに対し、有機農産物は0%(使用しない)である必要があります。
農薬や化学肥料などの化学物質にたよることなく、自然の力だけで生産された食品(農産物、加工食品、飼料及び畜産物)は、有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることが認定された場合に限り“有機JAS”マークをつけることができるのです。
つまり、この有機JASマークがない農産物や農産加工食品に、“有機”や“オーガニック”などの表示をすることはできません。さらに、生産1年目での認定もできないことになっているので、過去の肥培管理についても要件を満たしている必要があります。
たとえば、多年生のレモン(果樹)の場合では、最初の収穫の3年以上前から適合した生産が行われていることが認定され、有機JASマークが記載されているものにのみ、「有機レモン」や「オーガニックレモン」という表記をすることができるのです。
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<ミニコラム>
「無農薬」や「無化学肥料」の表示は禁止されてる!?
「無農薬」や「無化学肥料」という表示は、農薬や化学肥料を一切含まないかのような誤解を招くため、この表示をすることは禁止されています。というのも、土壌中の農薬残留や、ほかの畑からの飛来などを100%排除できないためです。「減農薬」や「減化学肥料」の表示も、どの程度低減されているのかが不明確であるため、同じく表示は禁止されています。また、「無農薬」とうたっていて、農薬を一切使っていなくても、化学肥料は使用している場合もあるので注意が必要です。
農薬や化学肥料を使用しないで栽培した農作物であれば、「栽培期間中農薬不使用」「栽培期間中化学肥料不使用」と表示するのが正しいのです。
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<3.自然栽培>
自然栽培とは、耕作や除草、農薬散布などを行わず、自然の力のみで栽培する方法のこと。実は明確な定義はなく、その内容はさまざまです。
これまで解説した「慣行栽培」「特別栽培」「有機栽培」「自然栽培」のちがいは理解できましたか? 以下の図表を見れば、農薬と化学肥料の割合がより理解できるかもしれません。
ほかにも、病害虫や雑草の発生・増加を抑えるための適切な手段(天敵・防虫ネット・防蛾灯など)を取り入れた「IPM(総合的病害虫・雑草管理:Integrated Pest Management)」という方法も行われています。
土を使わない方法や、室内栽培にも注目!
<水耕栽培>
水耕栽培とは、土壌ではなく、植物に必要な栄養分を水に溶かして、その溶液に根を浸して育てる栽培方法です。季節や天候に左右されず、また害虫や細菌による汚染も少ないので、安定的に計画生産ができるのが最大のメリットです。ただし、使用済みの養液の排水による地下水汚染が問題になるなどのデメリットもあります。
さらに、この栽培方法は設備や装置にコストがかかるため、販売価格も割高になる傾向に。天候不良などで野菜の価格が高騰している時には、逆転することもあります。
<植物工場栽培>
近年増えてきているのが、植物工場での栽培です。企業が導入したことでも話題になりました。光・温度・湿度・二酸化炭素濃度・養液などの環境条件を人工的にコントロールした施設内で野菜などの苗を育て、季節や場所にとらわれずに自動的に連続生産するシステムです。
光のコントロールには、「完全人工光型」「太陽光利用型」「人工光・太陽光併用型」があります。
栽培方法に込められたのは、生産者の思いだった!
野菜には「慣行栽培」や「有機栽培」、「自然栽培」など、実にさまざまな栽培方法があります。でも、どれがよくて、どれが悪いということではありません。生産者や販売者が、どのようなこだわりをもって野菜を販売していきたいのかによって、栽培方法は変わります。
わたしたち消費者が、栽培方法のちがいを知ることで、生産者がその野菜に込めた思いも一緒に受け取ることができたらいいですね。
WRITER
野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」
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