菜食料理人 坂井はな瑛さん
アインソフ銀座 店長兼料理長インタビュー
アインソフ銀座 店長兼料理長インタビュー
ヴィーガンレストランとして名高い「アインソフ銀座」。店長兼料理長である坂井はな瑛さんは、自身もヴィーガン歴13年という菜食料理人です。
ヴィーガンになる人には動物愛護の精神からやダイエット目的などさまざまな背景があるとされますが、坂井さんの場合は意外にも、私たちにとって身近なカラダの悩みが入口だったのだそうです。坂井さんにヴィーガンになったきっかけをうかがいました。
「もともとOLだったんです。その頃は、朝起きるのがつらかったり、電車の中で貧血気味になったり、生理痛がひどかったり。偏頭痛や便秘も顕著でした。そんな悩みを話したら、通っていた整体の先生がマクロビオティックをすすめてくれたんです」
それまでは、デパ地下でお惣菜を買ったり、外食したり、焼肉などお肉も食べていたという坂井さん。2006年に整体の先生からすすめられたマクロビオティックと出合い、玄米や穀物、野菜中心の食生活に切り替えたことで、体調が改善されていったそうです。
「体質だと思って諦めていましたし、特に体調を改善しようと意識して食を変えたわけではないのですが、3ヶ月くらい経ったとき、ふと、生理痛があったことを忘れている自分がいたんです。偏頭痛や便秘でずっと頼ってきたお薬も必要がなくなりました。食を変えたらカラダが変わった。棚からぼた餅的な感じです!」
ただ当時は今よりも、植物性のみで作られた商品はほとんどなく、食べるものは自分で作らざるをえなかったそうです。
「動物性のものを抜いた食事を自分でも作ってみたんです。そうしたら、ちっともおいしくなくって(笑)。肉や魚、ブイヨンに頼った料理しかしてこなかったんだなって痛感しました。それでマクロビオティックの料理教室に通い始めたんです」
昆布だしや季節を感じさせてくれる野菜など、植物性の食材のみでもおいしくいただけるように研究を重ねた坂井さん。体調不良も改善したことがきっかけとなり、以来ヴィーガンという自身に合った食生活を送っています。
カラダと食べ物がこんなにも密接に関連し合っているのだと身をもって体感した坂井さんは、思い切ってOLをやめ、「世の中の人にもこのことを伝えたい!」という想いから菜食料理人へ転身。食材の輪郭を際立たせるスパイスや調味料使いで、印象に残るヴィーガン料理を提案し続けています。
「人のカラダは7年で細胞が入れ替わると言われています。ヴィーガン歴13年になりますが、カラダはとても正直。もう戻れないですね」
2009年に「アインソフ銀座」がオープンした頃に比べ、ヴィーガン料理も少しずつ認知され、会食や接待で利用されることも多くなったそうです。
会食に人気は、メインに9種の野菜盛りが木箱で提供される「ディナーコース」4品5,720円(税込)。和をベースにフムスやスパニッシュオムレツなど無国籍な味わいも織りまぜ、食べ手を飽きさせない工夫が散りばめられています。
メニューにはハヤシライスやドライカレー、パンケーキといったアラカルトもあるほか、プリンやチーズケーキなどのカフェメニューも豊富。
実は利用客の半数はノンヴィーガン。「一度食べてみたかった」という人や、「おいしくて健康的だから」という目的で利用されるお客様も多いそう。
「それでもヴィーガン料理はまだまだマイノリティの世界。“今日はヘルシーにヴィーガン料理でも?”というふうに、食の選択肢の一つとしてカジュアルに利用していただけるように、おいしい料理を提供し続けたいですね」
写真=新谷敏司
坂井はな瑛さん
-Profile-
横浜市出身。現在「アインソフ銀座本店」にて店長兼料理長を勤める。「自分を大切にするごはん」をテーマに、菜食の楽しさ、美味しさを伝えている。好きな食べ物は玄米ご飯。座右の銘は「お料理をすることはヨガであり瞑想。いつも心に花束を抱えているように、あたたかい世界でありますように」
WRITER
敬食ライター。フードアナリスト。都内飲食店を中心にマルシェ、農家、ブルワー、コーヒークリエイター、料理研究家など幅広く取材。好きな場所は道の駅とアンテナショップ。出身地の青森県七戸町(旧天間林村)は“にんにく”の名産地で、シーズンになると放課後は裏の畑で収穫や出荷のためのネット詰めを手伝っていたことも。おやつは自家製黒にんにく。
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