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vol.14 金時人参<Kyoto Red carrot/Kintoki Ginseng>
vol.14 金時人参<Kyoto Red carrot/Kintoki Ginseng>
細長く鮮やかな紅色の金時人参。年末になると店頭に並ぶため、おせち料理やお雑煮のイメージが強いかもしれませんが、普段使いにもとても優秀な野菜です。
今回は金時人参のおいしさを活かすために知っておきたい、3つのポイントをご紹介します。
金時人参のルーツを紐解くと、違いが分かる!
金時人参は「京人参」とも呼ばれる、東洋系人参の代表種。普段から食べ慣れている西洋人参と比べると、鮮やかな紅い色で、細長いスリムな形をしているのが特徴です。
西洋人参と原産は同じ中東ですが、中国を通じて秋作の人参へと進化し、1700年代に日本へ伝わったとされています。そのため英語表記は<Kintoki Ginseng>。“ginseng”は高麗人参のことを指し、東洋種であることを意味しています。“carrot”は西洋種のことを指し、中東からヨーロッパを経て日本へ伝来した品種です。ちょっとした豆知識として覚えておくと面白いですね。
京ブランド野菜(※1)に認証されている金時人参ですが、生産量は香川県がトップで、全国流通量の80%を占めます。西洋人参よりも栽培期間が長いことや、細長いために折れやすいことから、1本ずつ手作業で抜き取って収穫します。このように、栽培にとても手間がかかる野菜なのです。
特徴的な紅色は、リコピンという色素成分によるもの。リコピンはトマトの成分として有名で、抗酸化作用が強いことで知られています。西洋人参にも含まれていますが、金時人参にはトマトよりも多くリコピンが含まれています。一方で、にんじんに豊富なβ-カロテンは西洋人参よりも含有量が少ないです。
※1:京都府ホームページ「京のブランド産品(野菜2)」
旬をおいしく味わうための、知っておきたい3つのポイント
<ポイントその1>
飾り切りデビューは金時人参がおすすめ!
料理をグンと華やかにしてくれる飾り切り。なかなか上手くできずに苦手意識を持っているかたも多いのでは?
金時人参は肉質がやわらかいので、型抜きや飾り切りにとても向いています。芯まで紅く、とても映えますよね。
さらに煮崩れしにくいという特徴も。シンプルな煮物でも、飾り切りされた金時人参が入っているだけで、とてもおしゃれに仕上がります。
<ポイントその2>
甘くてやわらか。にんじん臭の少なさで苦手克服
西洋人参との違いは、色ややわらかさだけではありません。
金時人参はにんじん特有の青臭さが少なく、甘さが際立ちます。にんじんが苦手なかたの多くは、いわゆる“にんじん臭”が嫌いだと言いますよね。にんじんが苦手なかたにこそ、金時人参は甘くておすすめです。金時人参の出回る冬場の時期は、にんじん克服のチャンスかも?
調理のしやすさもあるため、離乳食にも使いやすく、甘い金時人参は子どももよく食べてくれますよ。
<ポイントその3>
使い勝手の良さで広がる、メニューバリエーション
おせち料理やお雑煮に使われることが多い金時人参は、和食材として取り扱われています。しかし、やわらかく煮崩れしにくい使い勝手の良さから、汎用性がとても高く、洋風メニューやエスニックメニューへも重宝します。
今回は、スパイスと組み合わせた「サブジ」をご紹介。甘みが強くやわらかい金時人参で作ると、少ない水分かつ短時間で仕上げることができるだけでなく、スパイスの色に負けない鮮やかさも魅力です。
<金時人参のサブジ>
【材料】金時人参…1本、Aサラダ油…大さじ1、Aおろしにんにく…小さじ1/2、Aおろししょうが…小さじ1/2、Aクミンシード…小さじ1/2、Bターメリック…小さじ1/2、B塩…小さじ1/2、Bブラックペッパー…ひとつまみ、水…大さじ1、ガラムマサラ…小さじ1/2
【作り方】
①金時人参は皮付きのまま5mm厚の半月切りにする。
②フライパンにAを入れて火にかけ、香りが立ってきたら①を加えて炒め合わせる。
③全体に油がまわったら、Bを加えて炒め合わせる。
④水を加えてふたをして中火で7?8分蒸し焼きにする。
⑤火が通って水分がなくなったら、ガラムマサラを加えて炒め合わせる。
【ひとことアドバイス】
・クミンシードは油で炒めて、しっかり香りを引き出します
・ガラムマサラは香りが飛ばないよう、仕上げに加えましょう
・じゃがいもやカリフラワーなどを加えてもおいしいです
キレイな紅色と甘さを、日常使いでも堪能!
東洋種・京野菜というワードが先行し、どうしても“和”のイメージが強く、とりわけお正月にフォーカスされがちな金時人参。鮮やかな紅色とやわらかい肉質、そして際立つ甘さは、今の時期だけのおいしさです。いつもの料理を金時人参に置き換えて、その違いを楽しんでみるのもおすすめ。西洋種のように通年栽培されていないため、味わうことができる冬場の間にぜひ堪能してみてくださいね。
イラスト/中川美香
WRITER
野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」
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