ねっとり、熟成系焼き芋はなぜ人気!?
“さつまいも”オタクに聞いた最新事情とは<後編>

WRITER/
内田あり

スーパーの店頭でさつまいものいい匂いが漂ってくる……、そんな季節になりましたね。最近は焼き芋専門店に行列ができたり、ネット注文で冷凍焼き芋が家まで届いたりと、より手軽に購入できる時代に。売り方が変わっても、人がさつまいもを愛する気持ちは、昔も今も変わりませんよね。

そこでさつまいもの最新事情を、ご自身をオタクと呼ぶ『一般社団法人さつまいもアンバサダー協会』代表理事の橋本亜友樹さんに伺いました。


前編の記事はこちら

少数派ながらホクホク派も健在
品種や焼き方で食感の違いを楽しもう

 

――――人気のねっとり系も好きなんですが、実は個人的には、ホクホク系もけっこう好みです。そういう人って、実は多いですか?

 

橋本さん「私も、いわゆる昔ながらのホクホク系が好きで、家ではいも天をよく楽しんでいます。今は焼き芋全盛期で、ねっとり系で甘みの強い品種が多く生産されているのが現状ですが、個人的にはもう少し、ホクホクした品種が出てきてほしいなと思っています。甘みの強い品種だと水分が多めなので、油と相性が悪かったり、さつまいもご飯にすると溶けて形がなくなってしまうことがあるんです。そういう場合は、収穫したての時期に調理するか、なるべくホクホク系の品種を選ぶといいですね」

 

 

――――主流はねっとり系ですが、自分の好みで品種を選べるようになるといいですね。

 

橋本さん「実は、3割ぐらいはホクホク系が好みという話も聞きますよ。昔からさつまいもが好きな人は、ねっとり系よりホクホク系を好む傾向があるようです。実は甘みが強い紅はるかですが、風味が弱いというのが欠点なんです。紅あずまや鳴門金時などホクホク系で風味が強い品種なども、消費者が自由に選べるようになるといいなと思います」

 

 

――――お家でも簡単にできる、焼き芋の作り方を知りたいです!



橋本さん「おすすめは、さつまいもを丸ごとオーブンで焼く方法です。アルミホイルや新聞紙などで巻かないで、160〜180度で1時間ぐらいじっくりとオーブンで焼いてみてください。3〜4センチぐらいの太さのさつまいもだと、火の通りもいいですし、一本丸ごと食べられます。ちなみに、焼き芋をさっぱり食べたい人は、粒マスタードをつけてみてください」

 

銀座つぼやきいもの写真
写真提供/銀座 つぼやきいも

 

 

――――最近、焼き芋屋さんがたくさんありますが、お店の選び方や楽しみ方を教えてください。



橋本さん「お店によって焼き方が特徴的だと思うので、それに注目してみるのもいいですね。石焼きやつぼ焼、オーブン焼きなど、焼き方によってやわらかさにも違いが出てきます。たとえば、石焼きだと皮が焦げますが、つぼ焼きは皮が焦げないので、皮まで楽しめます。実は皮にはポリフェノールが含まれていたり、香りの成分も含まれるので、香ばしさを一緒に味わいたいならつぼ焼きがおすすめです」


 

<まんぷくベジが注目する焼き芋店>
 

銀座 つぼやきいも

 

超蜜やきいもpukupuku

 

焼き芋専門店 ふじ

 

 

ネット注文した焼き芋の写真
ネット注文で購入した焼きいもの一例です。

 

 

――――実は先日はじめて、焼き芋をネット注文してみました。とろりと甘くて、焼き芋の新しい楽しみ方を知った感じです。


橋本さん「紅はるかなどねっとり系のさつまいもを使った焼き芋は、その焼き上がりの特徴から、冷蔵や冷凍保存ができるようになりました。それによって、ネットでの販売も可能になったんです」

 

 

――――消費者が、いろいろな購入方法を選択できるようになったのはいいですね。ところで、さつまいもの病気が流行っているという心配なニュースを見ました。現状はどうなのでしょうか?



橋本さん「さつまいも基腐(もとぐされ)病が鹿児島県を中心に広がり、宮崎県にも影響が出ています。実はここ数年、鹿児島の生産量が減ってしまっているのですが、その病気の影響によるもの。鹿児島はもともと、芋焼酎やでんぷん、芋けんぴに使われるさつまいもの生産が多く、その品種が基腐病に弱いと言われています。

 

基腐病は雨風によって広範囲に広がってしまい、鹿児島ではかなり深刻な状況です。今は他の地域に広がらないように、水際対策を徹底して行っているようです。このような現状もあり、今年は茨城が鹿児島の収穫量を超えるのではないかと予想しています

 

 

 


甘みやねっとり感が楽しめる、焼き芋やさつまいもスイーツのブームがしばらく続きそうですね。その一方で、昔からのさつまいも好きにはホクホク派の存在も根強いところ。これからは私たち自身が、好みの品種や焼き方を自由に選んでいく時代がやってくるかもしれません。

 

これからますます寒さが厳しくなってくる時期。体が温まる焼き芋や、ほっくり感が楽しめるさつまいも料理などを楽しんでみてはいかがでしょうか。
 

 


<お話を伺ったのは…>

橋本さんの写真


一般社団法人さつまいもアンバサダー協会 代表理事
橋本亜友樹さん


2002年、神戸大学大学院 自然科学研究科 植物資源学修了、農学修士。2015年8月に「さつまいもカンパニー株式会社」を設立し、代表取締役に就任。2019年8月には「一般社団法人さつまいもアンバサダー協会」を設立し、代表理事に就任。現在は、さつまいもの栽培や販売・コンサルティングを行いながら、さつまいものPR活動を積極的に行っている。

 

WRITER

内田あり
Ari Uchida

フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。高校生と中学生の2人の娘をもつ母であり、子どもたちの野菜嫌いを克服させるべく、献立に頭を悩ませる日々。野菜不足になりがちなので、毎日の食卓には手作りのピクルスを添えるよう心がけている。