定番野菜が極上な一菜一皿に
じゃがいも
じゃがいも
品種によって多種多用なじゃがいもは、大きくはホクホクした粉質系と、煮崩れしにくい粘質系に分けることができます。主成分であるでんぷんが、料理の仕上がりを左右する要。味だけでなく、見た目や食味にも大きく影響します。この特徴をふまえて、料理への使い分けをすることが、じゃがいもを使いこなすコツ。"でんぷんを制する者はじゃがいもを制する"と言ってもよいでしょう。今回は、そんなじゃがいもと向き合っていきます。
じゃがいも
ビタミンCをはじめ、ビタミンB6やナイアシンなどのビタミン類が豊富なことから、「畑のりんご」との呼び名も。本来加熱に弱いビタミンCですが、でんぷんに守られるため破壊されにくい特徴があります。
<おもな栄養素>
ビタミンC、ビタミンB6、ナイアシン、でんぷんなど
優秀なエネルギー源も、産業原料に大差
じゃがいもの原産は中南米のアンデス山脈。標高3000mの高地でじゃがいもは生まれました。15世紀の終わりにスペインに伝わりましたが、アンデスとの気候の違いから栽培はうまくいかず、18世紀頃にようやく実(いも)がなるようになったと言われています。
日本には、ヨーロッパとは別の伝来ルートでインドネシアのジャカルタから伝わったことで、「ジャカルタのいも」が「じゃがいも」の語源とされています。飢饉(きが)による食料不足の対策として栽培が広がり、でんぷんやビタミン類が豊富なことによって、貴重な栄養源と重宝されていたのです。
じゃがいもの呼び名として「ばれいしょ(馬鈴薯)」を聞いたことはありませんか?これは中国から伝わった呼び名と言われていますが、詳しくは分かっていないそうです。現在では、農林水産省などの行政統計では「ばれいしょ」が使われていますが、一般的には「じゃがいも」が通用しますね。
2大品種「男爵」と「メークイン」は明治時代にアメリカから伝わり、日本に定着しました。最近では品種が増え、形だけでなく色にも特徴のあるものも出てきています。じゃがいもの生産量は228万tと野菜の中でトップ。(※1) しかし、その多くは片栗粉の原料になるでんぷん用で、ポテトチップスなどの加工用も除くと、生鮮のじゃがいもとして出荷されるのは2割程度なのです。
※1 出典:農林水産省「令和4年産野菜生産出荷統計」
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
北海道が日本のじゃがいもの約80%を生産しているのよ!※1
※1 出典:農林水産省「令和4年産野菜生産出荷統計」
あなどれない、じゃがいもの基本!粉吹きいもレシピ
粉吹きいも、家庭科の調理実習で作った記憶はありますか?ただ、大人になってからあらためて作ってみると、思っていた通りにできなかった…なんて経験はありませんか?
じゃがいもと少量の塩だけという究極にシンプルな料理ですが、じゃがいもの選び方、下処理、加熱方法と、どの工程にも見落とすことのできないポイントが隠れているのです。
粉吹きいもの粉の部分は、じゃがいものでんぷん。生いもの状態では、でんぷんはペクチンによって固まった状態になっています。これが加熱によってペクチンの働きが弱まり、ホクホクした食感へと変化していきます。そして、加熱したじゃがいもの表面にでんぷんを浮き上がらせたものが粉吹きいもなのです。
適している品種は、男爵やキタアカリなどの粉質系と言われる、でんぷんが多いホクホクタイプ。じゃがいもを切った後は、表面のでんぷんをサッと洗い流しておくとよいでしょう。これは、茹であがった後のじゃがいも同士がくっつかないように、作業性をよくするために行うもの。長時間水に漬けてしまうとでんぷんが流出してしまい、粉が吹かなくなってしまうので注意が必要です。
そして、加熱する際には水から加熱することと、塩を加えないことです。塩茹ですると、じゃがいもの甘さが引き立ち下味もつきますが、粉がふきにくくなってしまうため、粉吹きいもの時には塩を入れないのがポイントです。
これらのポイントをおさえておけば、鍋をかるくゆすっていく段階で細かい粉が全体に吹いてくるでしょう。
仕上げに塩で味を整えれば、基本の粉吹きいもの完成。粉チーズやカレー粉、乾燥バジルなどをまぶしてアレンジすれば、洋風に仕上げることもできますよ。
粉吹きいものレシピ
材料
・じゃがいも…3個
・水…適量
・塩…少量
作りかた
① じゃがいもは皮をむき、芽を取り除いたら、ひと口大に切って表面をサッと水で洗い流す。
② 鍋に、じゃがいもとかぶるくらいの水を入れ、強火にかける。
③ 沸騰したら弱火にして、15分茹でる。(やわらかくなるまで)
④ お湯を捨てて、再び弱火にかけ、鍋をゆすりながらヘラで混ぜて粉をふかせる。
⑤ 塩で味を整える。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
角が取れて小さくなるから、大きめにカットしておくのがポイントよ!
新じゃがは、夏にも秋にも!
春の味覚として親しまれている新じゃが。品種ではなく、掘りたてのじゃがいものことを指しますが、じゃがいもが収穫できるのは春だけではないことをご存知ですか?じゃがいもの一大産地の北海道では、雪解け後の春に植え付けたものが、8月頃に収穫がはじまります。また、九州地方では、冬に植え付けたものが春に、夏に植え付けたものが秋と年に2回収穫することができるのです。
新じゃがの魅力は皮の薄さとみずみずしさですが、水分が多くでんぷんが少ないため、先述でご紹介した粉吹きいもには向かないので覚えておくとよいでしょう。
じゃがいもの保存で気をつけたいのは、温度と光。低温で保存すると低温障害を起こしてしまうことがあるので、常温での保存がベターです。また光に当たると発芽が促進されるだけでなく、緑化し食中毒の原因となるソラニンが生成されるため、日に当たる場所に保管するのは避けましょう。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
りんごと一緒に保存しておくと芽が出にくくなるわよ!
まとめ
豊富なでんぷんのおかげで、貴重なエネルギー源としてかつての日本の飢餓を救ってきたじゃがいも。ビタミンCなどのビタミン類が加熱によって壊れにくいのも、でんぷんのおかげなのです。そして、調理においてもでんぷんの性質を知っておくことが、おいしさの鍵。
日本の野菜生産量のトップでありながらも、生鮮としての利用がまだまだ少ないじゃがいも。品種ごとの食味の違いなどにも注目していくと、もっと日々の食卓で楽しむ機会が増えるでしょう。
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