定番野菜が極上な一菜一皿に
里芋
里芋
ねっとりとした食感にやさしい甘味のある里芋。下処理に苦手意識があることや、煮もの以外の食べかたが分からないなどの理由から、家庭での需要は低迷していますが、和食業界では根強い需要があります。少し地味なイメージがありますが、低カロリーで食物繊維が豊富なのです。今回は、そんな里芋と向き合っていきます。
里芋
ぬめり成分は水溶性の食物繊維の一種。ナトリウムの排出を助けるカリウムが多く、むくみの解消や高血圧予防にも効果が期待できます。いも類の中では最もカロリーが低く、食物繊維も豊富に含まれる優秀食材です。
<おもな栄養素>
カリウム、食物繊維
米食になる前の主食だった重要作物
マレー半島付近の熱帯が原産とされていて、ナイジェリアなどアフリカ諸国では現在も主食としている地域が多くあります。里芋は英語で「taro」と表記し、アフリカ諸国で食されているタロ芋と同じ仲間です。日本でも稲作が始まる以前は、里芋が主食とされていました。
現在日本で食べられている里芋は、親芋を食べているものと、子芋を食べているものに大きく分けられます。
里芋は親芋を中心に、子芋・孫芋と分球して成長していきます。どんどんと分球していくことから、子孫繁栄の象徴としておせちなどにも使われています。
一般的な里芋は土垂(どたれ)という品種で、子芋の部分を食用にしています。卵型をしていて、ホクホクした食感と煮崩れしにくいのが特徴です。また、土垂よりも小ぶりな石川早生(いしかわわせ)も子芋を食べる品種。コロンと丸い形をしているので、きぬかつぎに向いています。
親芋を食用にする品種の代表は、宮崎県特産の京芋で、たけのこのように太く長い見た目から別名「たけのこ芋」とも呼ばれます。
ボコボコとした形の八つ頭は、親芋と子芋が分球せずに塊になっているのが特徴。ぬめりが少なく、ホクホクした食感です。親芋から八方に子芋が出ることから縁起物としておせちにも使われます。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
種類によっては、葉柄も食べられるのよ!
ホイル焼きで簡単皮むき、きぬかつぎ
里芋の子芋を皮付きのまま茹でたり蒸したりして、皮をむきながら食べるきぬかつぎ。里芋の品種と思われがちですが、品種名ではなく料理名なのです。漢字では「衣被」と書き、衣を羽織っているように見えることが名前の由来。とても奥ゆかしい料理ですね。
定番は、塩や味噌をつける食べかたですが、いかの塩辛や南蛮味噌などお好みの調味料で楽しむことができます。
シンプルなだけにアレンジの幅が広く、和風だけには留まりません。ガーリックバターやブルーチーズ、タプナードなどの洋風の味付けとも相性バッチリなのです。
きぬかつぎは、皮をむかずに加熱できるのも手軽ですね。おすすめの加熱方法は、ホイル焼き。茹でたり蒸したりするためにお湯を準備する必要もありません。ホイルの中でじっくり蒸し焼きになるので、ホクホクに仕上がり、皮がスルッとむけるようになります。
きぬかつぎのレシピ
材料
・里芋…6個
・バター…10g
・おろしにんにく…小さじ 1/4
・パセリ…2g
・塩…少量
作りかた
① 里芋は洗って水を拭き取ったら、皮目に1周、切り込みを入れる。
② 1個ずつアルミホイルで包み、魚焼きグリルで15分焼く。
③ 里芋を焼いている間に、常温に戻したバターにおろしニンニク、刻んだパセリ、塩を混ぜ合わせる。
④ 里芋につまようじなどを刺しスッと通ったら粗熱を取り、上半分の皮をむく。
⑤ 混ぜておいたパセリバターをのせる。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
水を使わないから水っぽくならないのよ!
土付きを選べば長期保存も
デリケートなイメージの強い里芋ですが、正しく保存すれば常温で1ヵ月は保存が可能です。ポイントは土付きのものを選ぶこと。土は乾燥や光から里芋を守り、おいしさをキープするために大切な存在。調理の際、洗う手間はありますが、保存性を重視するなら土付きを選ぶようにしましょう。
新聞紙でまとめて包んで、玄関や廊下など直射日光が当たらない場所で保存します。新聞紙がない場合には、1個ずつキッチンペーパーで包み、紙袋などに入れて保存がおすすめ。常温で1ヵ月保存できます。
夏など室温が高くなる時には野菜室に入れましょう。この場合の保存期間は約2週間です。5℃以下に長時間置くと低温障害で変色してしまうので、必ず野菜室に入れてくださいね。
最近は、素洗いされた里芋も売られています。すぐに使う時にはとても便利ですが、保存性は下がるため、用途に合わせて選ぶとよいでしょう。
カスミ子先生から、ひとことアドバイス
洗ってからの保存はカビが生えやすいのでNGよ!
まとめ
米食になる前の日本では、主食とされていた里芋。近年は、調理の手間がかかることや、料理のレパートリーが少ないことで需要が低迷しているものの、外食や中食では根強い需要があります。おせちを始めとした日本独自の食文化で縁起物として使われるので、どうしても和食のイメージが強く、少し地味な存在ですが、シンプルさを生かすと料理の幅はさらに広がるのではないでしょうか。洋風の味付けとの相性のよさも、ぜひ体感してみてくださいね。
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