厚切り大根も時短で味しみ、メイン級の食べ応えと満足感「大根ステーキ」

WRITER/小島カスミ子

定番野菜が極上な一菜一皿に
大根

煮ものやサラダ、大根おろしや漬けものなど用途の幅が広く、江戸時代には通年栽培されていたと言われ、古くから日本の食卓に根付いている大根。品種が多いことも魅力で、都市部でも地方品種が多く栽培される、めずらしい野菜です。今回は、そんな大根と向き合っていきます。

大根

収穫された大根

ビタミン類や食物繊維は皮にも多く含まれるため、皮付きのまま使うか、皮は別の料理に使うのがおすすめ。消化酵素や抗酸化酵素を多く含みますが、加熱すると壊れてしまうので、効率よく摂取するには生で食べるのがいいでしょう。葉はβ-カロテンを多く含み、緑黄色野菜に分類されるため、捨てずに料理に活用するのが◎。
 
<おもな栄養素>
葉酸、ビタミンC、カリウム

世界で最も品種が多いと言われる日本の大根

ザルにのせた大根

原産地はコーカサス(黒海とカスピ海を結んで連なるカフカス山脈の周辺地域)、地中海東部、中央アジアにまたがる地域と言われていますが、諸説あり、あまり明確にはなっていません。しかし、栽培の歴史は古く、古代エジプトのピラミッド建設の時には、既に食用とされていたという記録もあるほど。日本には奈良時代以前に中国から伝わっていて、古事記にもその記載が確認できます。

世界における大根は、ヨーロッパ大根、中国大根、日本大根の3つに大きく分けることができ、日本の品種は青首系と白首系の2つが主流です。各地に根付いた地方品種が多く、100種以上もあり、世界で見てもこれだけ多くの品種数があるのは日本特有。これは江戸時代の参勤交代によって、都市と地方の交流が活発になったことからと言われています。地方品種の多くは白首系で、辛味が強かったり身がかたかったりするものが多く、煮ものや漬けものなどに使われることから、郷土料理との結び付きも強いです。

一般的に売られているものは、根の上部が淡緑色の青首大根で、栽培しやすいだけでなく、甘みが強く辛味が少ないことから、扱いやすさという点もあり流通の主流になっています。
最近では、辛味の強い品種や、赤・紫・黒・縞模様などのように色がさまざまな品種も注目を集めています。
 

練馬大根
練馬大根

東京の練馬で栽培される江戸東京野菜。80cmほどになる大型の大根で、主にたくあん漬けにされます。

 

三浦大根
三浦大根

神奈川の三浦半島で栽培される中太りの大型大根。煮ものやなますなどに使われます。

 

桜島大根
桜島大根

鹿児島で栽培される大型の丸大根。1本10kgを超えるものも多く、世界最大と言われています。

 

聖護院大根
聖護院大根

京都で栽培される京野菜。ずんぐりと丸い大型の大根で、甘味があり辛味が少なく、煮崩れしにくいことから、主に煮ものに使われます。

 

源助大根
源助大根

石川で栽培される加賀野菜。尻詰まりのずんぐりとした形をした中太大根。肉質が緻密で煮崩れしにくく、味が染み込みやすいため、加賀おでんを始めとした煮込み料理に向いています。

 

青首大根
青首大根

流通の主流になっているのは青首大根です。

 

カラフルな大根
カラフルな大根

皮が薄緑色で中が赤い「紅芯大根」、皮が真っ赤で中が白い「紅化粧」、根の上部が紫色の「赤首系大根」など、色とりどりの品種も人気です。

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

皮が黒くて中が真っ白の「からす大根」という品種もあるのよ!

厚切り大根も小ワザで味しみ、大根ステーキ

大根ステーキ

厚切りにした大根をジューシーかつ香ばしく焼いた大根ステーキ。中までやわらかく仕上がる秘訣は、事前にレンジ加熱をしておくこと。さらに、格子状に切り込みを入れておくと、加熱時間の短縮になるだけでなく、調味料の味しみも抜群になります。バターで香ばしく焼いたら、調味料に絡めるだけで完成。長時間焼いたり、下茹でする必要もありません。

バターのコクやにんにくの旨みが染み込んだ大根は、メイン級の食べ応えと満足感。脇役感の強い大根が、主役になる一品です。
 

大根ステーキのレシピ

材料
・大根…1/3 本
・バター…10 g
・しょうゆ…大さじ 2
・砂糖…大さじ 1
・みりん…大さじ 1
・おろしにんにく…小さじ 1
・大根の葉…あれば

 

作りかた
① 大根は2.5cmの厚さに切り、両面に格子状の切り込みを入れる。

大根

 

② 耐熱皿に並べふんわりラップをして、電子レンジ600Wで6分加熱する。

大根

 

③ フライパンを中火で熱し、バターを溶かしたら、レンジから出した大根を両面に焼き色がつくまで焼く。

大根

 

④ 混ぜておいた調味料を加えて、煮絡める。

大根

 

⑤ お皿に盛り、あれば刻んだ大根の葉をのせる。

大根

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

余熱で調味料が染みるから、少し汁気があるくらいで火を止めるのがポイントよ!

部位ごとの特徴を知って上手に食べ分けを

切り分けた大根

細長い大根は、部位によって味わいが違うのが特徴。部位ごとの特性を知っておくと、料理にした時に、大根のおいしさを最大限生かせるでしょう。

▶ 上部
上部は甘さがありやわらかいのが特徴。サラダや大根おろしなど、生で食べるのにおすすめです。

▶ 中部
中部は用途が広く使い勝手が◎。太さが均一なため、煮ものに使うと扱いやすいです。

▶ 下部
下部は辛味が強いのが特徴。漬けものにすると食べやすくなります。辛味のある大根おろしにしたい場合も下部を使うのがおすすめ。

▶ 葉
捨ててしまいがちな葉ですが、β-カロテンが豊富な部分。刻んで青味として活用したり、炒めものに使いましょう。

カスミ子先生から、ひとことアドバイス

部位別に切り分けて保存しておくのが便利よ!

まとめ

部位によっても味わいが変わるため、どの料理にで使うかの使い分けも、大根と上手に付き合うコツ。厚切り大根は、下茹でしたり面取りしたりなどの下処理が必要と学ぶことも多いですが、レンジを使って短時間で下処理を済ますことも、手軽に野菜を楽しむ秘訣です。大根ステーキで、大根を主役にした食卓をお楽しみください。

WRITER

小島カスミ子
Kasuiko Kojima

野菜や果物のおいしさやすばらしさ伝えるべく、時には優しく、時には厳しくアドバイス。いつもしっかり者でありながら、野菜のこととなると、ついついムキになってしまうかわいらしい一面も。中の人は、野菜ソムリエプロ&管理栄養士の小島香住さん。